_ 前回公開時から見ていなかったので内容はほとんど覚えておらず新しい映画のように楽しめた。やはりスゴイ作品で、とくに冒頭のワルキューレの騎行をバックにへり部隊がベトコンを爆撃する場面は比肩するものがない。追加されたフランス人のプランテーションの場面はちょっと長いと思ったが、コッポッラの思想が披瀝されていて面白かった。見ていて思ったのだが、この場面に出演した20人あまりの役者は今どこで何をしているのだろう。死んでしまった人もいるだろう。この特別版で復活したからまだよかったけど、映画にはカットはつきもので、永久に消されてしまう場面は沢山あるのだろう。
_ そこで思い出したのが「戦場のメリークリスマス」のことだ。私はこの映画のラッシュを大嶋監督と一緒にみたことがある。坂本龍一の音楽が入る前のものだ。ラッシュにあって劇場公開版にない場面がある。それは、トム・コンティが登場する場面で、彼が日本軍攻撃前夜のシンガポールで美女と恋に落ち一夜を過ごすというロマンチックなものだった。この美女はニュージーランドで一番人気のある女優だということだったが、消されてしまった。ビデオにもなかったからもう二度と見られないだろう。この女優は家族や友人になんと説明したのだろう。お金はもらえたのだろうから別に気にしなかったのだろうか。
_ 「地獄の黙示録」を見てもうひとつ考えたことは、ベトナムで戦ったアメリカ兵は多くが私と同年配で彼らはいまのアメリカの指導層になっているということだ。あの戦争の意義はともかく、あの映画に描かれたような苛酷な状況を生き抜いてきた連中と平和な日本で安穏な生活をしてきた我々はとても対等に戦えないなということ。アメリカだけではなく世界の主な国は過去50年間になんらか戦争を経験している。要するに日本だけが無菌室で育てられてきたのだ。
_ 話は変わるが、「市民ケーン」を何回目かに見た。もちろん映画史の上位にランクされる作品だが、今回はオーソン・ウェルズやジョセフ・コットンの老け役が気になった。自分が歳をとったからかもしれないが、あんなにからだの動きがよくないよな、などと思った。まあ、オーソン・ウェルズがこの時26才だったことがすごいのだが。
_ キネマ旬報の予想では「アビエイター」のマーティン・スコセッシが作品賞と監督賞を両方取るだろうされていた。スコセッシは過去4回監督賞にノミネイトされて全て落選。同情票が入ると思われた。ところが、結果は両方ともクリント・イーストウッドに取られてしまった。作品を観ていないのでなんとも言えないが、アメリカでは同情票はあまりないのかもしれない。
_ 日本アカデミー賞という野暮な名前の賞があるが、その本年度の最優秀主演女優賞は鈴木京香に与えられた。「血と骨」での演技に対するものだが、熱演ではあるが、「主演」ではなかった。あの映画は北野たけしだけが主演で女優はみな助演としか言えない。あれが主演だったら「下妻物語」の土屋アンナははるかに出番が多かったから助演ではなく主演だろう。鈴木京香は過去3回優秀主演女優賞を取ったが最優秀を逃していたとのことで、同情票があったのだろう。たいした賞ではないからどうでもいいが。
_ 日本の漫画を原作とした映画。
_ CGがすごくて圧倒される。
_ 主人公のアリータはサイボーグで過去の記憶を失っている。そこは攻殻機動隊と似ている。日本のアニメをまねて目は実際の倍ぐらいあって最初は異様に感じた。最後のほうではあまり気にならなくなった。
_ アリータ役の女優の名前があがっているが首から下はCGで顔も目が大きくあまりその女優の面影がない。体の動きもモーションキャプチャーで作られたものだと思うので役者としては複雑な気持ちだろう。
_ 渋谷のシネクイントで観た。派手なところはないが傑作。
_ 東京の上流階級の華子を門脇麦、富山から出てきた美紀を水原希子、政治家の家系の弁護士青木幸一郎を高良健吾が演じる。
_ いうまでもなく、東京と地方には断絶があり、さらに東京にも階級があって異なる階級の者は出会うことも少ない。
_ 美紀は、慶応に入るが家が貧乏で中退してキャバクラで働く。在学中にノートを貸した(そして返さなかった)男が客としてきて肉体関係になる。よくある話で、階級の違う男女が出会う一つのカタチだ。
_ 東京の中にも階級があるというのは感じてはいたが、映画ではっきり描かれるのは初めてではないか。
_ 私の家は中の上くらいだったが、親戚が集まると、祖父、親、叔父、伯父などみな東大で、それも法学部以下は一段下。そんなのが大嫌いだった。
_ 私は青木幸一郎の立場になるのかもしれないが、思いっきり反抗したのでその点は満足で後悔はない。その結果母親はじめ苦しめた人はいたが仕方がない。