_ 冷戦下、韓国で死刑囚など31人の無法者が集められ、シルミドという孤島で苛酷な軍事訓練を施される。その目的は、金日成の暗殺だった。
_ しかし、韓国は北との宥和に方向を転じ、彼ら特殊部隊は邪魔者になり、抹殺の命が下される。それを知った男たちは、国と対決することを決意する。
_ 最初の訓練のあたりはアメリカ映画にもあるようなもので、退屈だったが、後半盛り上がる。全体として上出来の作品だと思ったが何かが足りない。
_ 男達は国に裏切られたが、では彼らはそもそも何を期待していたのか。祖国統一というスローガンは叫ばれるが、彼らはそのような政治目的に命をかけていたわけではなく、求めていたのは成功した場合の無罪放免と金と名誉だったようだ。そこには大義はなかった。
_ 類似の設定の映画に「ランボー 怒りの脱出」(そのストーリーについては2002年10月7日の日記参照)がある。「シルミド」の特殊部隊は「ランボー」の捕虜(POW)にあたり、国と対決する場面ではランボー自身に重なる。
_ ランボーは自らが裏切られたことのみに怒っているのではなく、アメリカの正義を信じてベトナムで戦い犠牲になった多くの兵士のために怒っている。国が掲げた大義の為に献身した者を裏切る行為をランボーは許せない。
_ 「シルミド」の部隊は傭兵に似ていて、彼らの多くは世俗的な報償(死んでも名が残るといった無形なものも含む)を期待していたようである。そこには献身(名前も栄誉も残らなくても自分を捧げる)の対象になる価値はなく、リスクは大きいが成功すれば代償も大きいギャンブルがあった。
_ 「シルミド」における国家の裏切りは詐欺ではあるかも知れないが、あくまで世俗的な犯罪であり、精神界における罪の色彩は薄い。その結果、裏切りに対する怒りも賃金を払われなかった傭兵の怒りに似て、次元の低いものになってしまう。
_ 離婚した両親の母親の方と暮らしている11歳の娘ソフィが30歳の父親とトルコの海辺のリゾートで過ごすバケーション。何事も事件らしきものは起きず、楽しい日々が過ぎていく。しかし、別れは来るのでその予感が哀しみをもたらす。はっきり描かれなかったが、たぶん永遠の別れ。
_ 私は、まず家族と行ったバリ島を思い出した。次に、両親と妹と行ったロングアイランドの海を思い出した。この映画の状況とは違うかもしれないが、思い出に残るバケーションは何か悲しい気持ちにさせる。なぜか、当時の楽しんでいた最中から悲しい気持ちになっていたようにさえ思える。
_ この歳になると、過去が戻ってこないことは明確で、将来同様なことが繰り返さないだろうこともわかってくる。また会えると思って別れた人はすでにこの世におらず、いても元の人ではない。
_ この映画は、観る人によって全く違った印象を持つだろう。つまらないと思う人もいるだろう。しかし、そのような人も10年、20年たって観ると感動するかもしれない。映画とはそんなものだ。