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2002-08-23 料理屋で会った有名人

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先日の宮沢りえの他こんな人たちを見かけた。               

エノテカ・ピンキオーリ(イタリアン)で小泉純一郎、トゥール・ダルジャン

(フレンチ)で中村紘子と庄司薫、プント・プンティ(イタリアン)で浅野温子、エル・トゥーラ(イタリアン)で鹿賀丈史、纏(鮨)で金子信夫、酉友(焼き鳥)で舞の海。こう並べると皆さんイメージに合ったところでお会いしてますね(笑)。 


2004-08-23 女子マラソン

_ ラドクリフの圧勝と予想したが、野口だったら勝てるかもしれないと思って見ていた。意外なことにラドクリフは脱落したが、独走する野口にヌデレバが迫ってきた。東京オリンピックの時の円谷を思い出して、またあの光景は見たくないと思った。

_ 東京オリンピックの時私は高校生で高校から券が配られ、女子砲丸投げを見た。太ったおばさんを見たという記憶しかない。マラソンはテレビで見たが、一つの場面だけが強烈に記憶に残った。それは円谷が抜かれた瞬間だ。

_ 鉄人アベベがゴールしてから、約2分遅れで円谷幸吉が国立競技場に入ってきた。しかし、そのすぐ後に英国のヒートリーが来た。疲れ果てた様子で後ろを振り返ることなく走る円谷にヒートリーがひたひたと迫る。そして、第3コーナーでスピードを上げたヒートリーはするすると円谷を抜き去った。その光景は、私の記憶の中ではサイレント映画のように音がない。

_ しばらくして、円谷はあの有名な遺書を残して自殺した。「父上様、母上様、三日とろろ美味しゅうございました。干し柿、もちも美味しゅうございました」で始まる遺書だ。まだ戦後が終っていない頃、国民の期待を一身に背負った実直な自衛官が選んだ道だった。オリンピックで抜かれたことが直接の原因ではなかったのだろうが、思い出すとあの光景と自殺が重なってしまう。

_ あれから40年が経って、日本の若者は変わった。今回のオリンピックを見ても逆転負けは少なくなり(以前は日本選手は最後で余力がなく逆転されることが多かった)、反対に最後に抜いて勝つパターンも出てきた(女子800メートル自由形の柴田亜衣とか)。負けた連中もそれほど悲愴感はないだろう。負けても競技を楽しんだと言って批判されたシドニー大会の女子競泳陣の精神がいい方向で生かされているようだ。


2023-08-23 三島由紀夫 薔薇のバロキスム

_ 美学者谷川渥の評論。著者は私と同学年だ。

_ 三島論の中ではよくできたほうだ。しかし、著者も言っているように、三島論はcommon placeになりがちで、誰もが同じようなことを書くが、ほとんど的を外している。

_ 私も、三島といささかか関わった人間として三島由紀夫が何者であったのか、とここ半世紀余り考えてきた。でも、そろそろ私の寿命も残り少ないので何等かの結論を出す必要がある。

_ 三島は、「人生はつまり真逆様の頽落である」といい、老年は永遠に醜い、青年は永遠に美しく、美しい青年は醜くなる前に死ぬべきだという。三島は、美しく英雄的に死ねる限界の年齢は西郷隆盛が自決した49歳だとし、その年齢の前に死んだ。

_ 人間一般に不思議なのは、みな自分の死について真面目に考えないということだ。もし、自分が死刑囚であれば、毎日死について考えざるを得ないだろう。人間だれも、死をまぬがれることはないので、その意味でみんな死刑囚なのだ。そして、長生きすればするほど人間は醜くなり、その死にざまも無様だ。

_ 三島は、自分の未来を正確に予想する能力を有していて、醜悪な最期を回避するためには、自死しかないと考えた。三島の運動能力を馬鹿にした石原慎太郎も、脳梗塞を患い身体が不自由になり、さらにすい臓がんで余命を宣告されたときは、三島の死に方をうらやましく思ったのではないか。

_ 合理的に考えれば、老残をさらすよりも夭折がいいことはわかる。しかし、普通の人間は合理的に考える能力がないので、自分だけは特別の道を行けるのではないかと勝手に考える。そんなことはない。

_ まあ、三島もボディビルで肉体を作る前は空襲で死ぬことはあっても自決は考えなかっただろう。肉体は作り上げると、それは自分の作品になり、美術品とは異なり衰退していく。それを防ぐには自死しかない。理由はそれだけでもよかったのかもしれないが、あまりにエゴイスティックだ。英雄としての死にはストーリーが必要だ。

_ 自衛隊を国軍にするという主張は、三島の本音だったかは、疑う人も多い。しかし、三島と一緒に死んだ森田必勝は本気だったはずだ。彼こそ本当の憂国の士だった。

_ 三島の不幸は、彼は森田のように無智になれないことだった。智者たる三島は自分たちの行為が無効であることはわかっていた。政治的に無効というだけでなく、「天人五衰」の最後に明らかにしたようにすべての行為は無効なのだ。それでも、短刀を腹に刺したとき三島は何を考えたか、何を感じたのか。それは永遠に謎だ。


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