_ 今、「仁義なき戦い」シリーズを見なおしているが、藤井総裁と石原大臣の戦いと重ねてみたくなる。
_ 藤井は勿論悪役だが、もみ手・泣き落としも恫喝も臨機応変に使いこなす一筋縄では行かない人物で映画では金子信夫が演じる山守親分を思わせる。石原ははじめて大きな仕事を与えられた若い者で、手柄をたてようと血気にはやっている。映画でいえば渡瀬恒彦の役どころか。小泉首相は写真でしか登場しない神戸の大きな組の親分(丹波哲郎)いうところか。
_ 渡瀬恒彦はよく鉄砲玉の役を演じる。「鉄砲玉の美学」という主演作もある。鉄砲玉がなんであるかというと、Aという組がBという組の縄張りを取ろうとするとき、元気のいい若い者に金と武器を与えBの縄張りで派手に遊べという。鉄砲玉はBを挑発するように行動しやがてBの組員とけんかになって殺される。それを待っていたAはBの縄張り内で鉄砲玉の葬儀を盛大に執り行う。沢山の組員が参列し、全国の友好関係にある組織からも親分衆が集まる。それを機に侵略が始まる。
_ さて石原伸晃は鉄砲玉にされてしまうのだろうか。小泉は石原が藤井とりに失敗して傷を負い更迭されることになってもかまわないのかもしれない。小泉は藤井が粘れば粘るほど抵抗勢力の存在を印象付けられる。自分に被害が及びそうになれば、石原を切って妥協するかもしれない。
_ 政治家はヤクザより頭がいいだろうから、映画より複雑な展開になるのだろうか。
_ 有川浩の原作の実写化。
_ 近未来の日本。メディア良化法に基づき公序良俗に反するメディアを排除しようとする勢力と図書館法に基づき表現の自由を守ろうとする勢力が激突する。両者はそれぞれの法律によって武装が許され一定のルールの下に戦闘行為が許可される。
_ 執行部隊であるメディア良化隊は中央政府に属し、図書館隊は地方自治体に属する。
_ 現実の世界であれば法律が矛盾すれば憲法に基づきどちらが正しいか最高裁が判断するところ、この世界では武力で解決しようとする。
_ 法律を楯にしながら互いに譲れないというのは案外今の世界の現実かもしれない。裁判所が判断するといってもその結論が正しいと思っている人は少ない。日本においてはそもそも裁判に対する関心が希薄で、最高裁のどの裁判官がどのような意見を持っているか知っている人はほとんどいない。私もしかり。
_ 弁護士として裁判を経験すると(もっとも私は訴訟弁護士ではないのでたいした経験はないが)判決がどうなるか予想がつかないことが多い。きちんと理屈が述べられ経験豊富な裁判官が裁けば正しいひとつの結論に到達すると思うかもしれないが、そうではない。交渉で解決せず裁判になった民事事件は多くの場合双方にもっともな言い分があり、どちらに勝たせてもそれなりに筋が通った判決が書ける。
_ 刑事事件は分からないが、民事では裁判官は真実の究明よりも書きやすい判決を書こうとしているのではないかと思うことがある。判決を仕事と考えた場合、短時間に多くの判決を書けた方がいいに決まっている。そのような裁判官が優秀であると見られているのは確かだ。
_ こう考えると、紛争を裁判ではなくて戦争で解決するのはそれほど変な考えではない。