少数意見

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2001-12-10 5回目の千と千尋

_ 土曜日の4時の回。半分くらいの入りか。7月20日公開で5ヶ月続いているのですごいことだ。

_ 私は7月30日、8月14と23、10月11日の4回見ているが、ひとつの映画を5回見るのは初めてだ。そろそろ冷静に見られればと思ったが、案に反して、別の映画の予告編をやっているときから感動の予感で目が潤む始末。したがってこの映画を客観的に評価する立場にはない。

_ これまではストーリーの展開に注意が向き、緻密な構成(特にメインテーマと並行して進行するカオナシの物語の組み合わせの妙)に感心していたが、今回は映像をじっくり見ることが出来た。あらためて映画が動く絵であることを実感した。一つ一つのフレームが絵として完成していて、場面場面に対応したスピードで流れていく。瞬時に通り過ぎていく無数の絵を巻き戻して見たいと思う。DVDを買わなくては・・・。今一番見たい場面は、最初にハクが現れるところで、急に夕闇が迫り油屋の灯りが点灯するところ。ここのスピード感はスゴイ!観客はここで異界の時間流に入っていく。

_ ほかにも取り上げたい場面はいくつもあるが、個々の名場面の集積が名画になるわけではない。私がこの作品が特別だと思うのは、神の手を感じるからだ。三島由起夫は「英霊の声」を書いたとき母親に「手が勝手に動いてしまう」と言ったそうだが「千と千尋」にもこのような神秘的な力を感じてしまう。民族の集合的無意識が顕在化したというか、日本人が他文化を取り込みながらら醸成してきた文化がここに結実した感がある。これは「源氏物語」や「モナリザ」の誕生に比肩しうる芸術史上の大事件なのかもしれない。それをリアルタイムで体験できる幸せを満喫している。


2003-12-10 マトリックス レボリューションズ

_ この映画の中に「風の谷のナウシカ」とそっくりな場面があった。他にも気づいた人がいるかとネットの検索(マトリックスとナウシカで)をしたら、いたいた大勢いた。中には映画が終ってからもナウシカの音楽が頭の中をグルグル回っていたという人までいた。どの場面かは敢えて書かない。というかメンドウなんで。

_ ナウシカの他ガンダムやドラゴンボールとの類似を指摘する人もいて、2/3は日本のアニメのパクリだという意見もあった。私はマトリックスや日本アニメの専門家ではないので論じる資格はないが、著作権については一応プロなので考えてみた。

_ 著作権侵害でマトリックスの製作会社であるワーナーブラザーズを訴えられないか。

_ 日本では映像同士の著作権侵害に関する判例が少なく、どこで線が引かれるかはっきりしない。たとえば、作品の主題、ストーリーの展開、登場人物の設定、主要なエピソードなどを全てパクれば著作権侵害は明らかだ。典型的なものとしては黒澤明の「用心棒」を真似した「荒野の用心棒」。今年の初めに話題になった某テレビ局の大河ドラマもそうかな。

_ 今回の「マトリックス レボリューションズ」が「風の谷のナウシカ」から取って来たとみんなが問題にしているシーンは多分3分ほどのもので他にストーリーとか登場人物とかが似ているわけではない。(もっともオームみたいなキカイが出てきたが。)でも多くの人が観終わった後あれはナウシカだと思い、他の人と話す。実は私も劇場から出てすぐに友人にナウシカとそっくりな場面があったとメールした。

_ 何が著作権侵害になり何がならないかの一般的な判断基準を作るのは難しい。とくに映像の場合は一瞬の画が全体を染め上げることがあるので長さは問題でない。結局最後は観客の印象で判断するしかないのではないか。

_ たとえば今回のマトリックスの最後のネオとスミスの豪雨の中の決闘は「七人の侍」の豪雨の中の野武士との合戦に似ている。でも、この程度なら観客はニヤリとするくらいだろう。次に、ネオとスミスの空中での格闘はドラゴンボールで何回も見た気がする(たとえば悟空とベジータ)。この場合も観客の反応は好意的だろう。でもナウシカの名場面が突然出てくると「エッ!ウッソー!」とかなり否定的になりうる。

_ ナウシカのあの場面は独創的で、感動的で、作品全体を象徴するものだ。つまりあの場面だけで「風の谷のナウシカ」を観たことのある人は一瞬の内に作品を貫く思想を感じあのテーマ曲が頭の中で奏でられるのだ。従って、私は「マトリックス レボリューションズ」は宮崎駿の著作権を侵害していると思う。


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