少数意見

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2001-12-17 マーシャル・ロー

_ 多分公開当時の映画評がよくなかったので見なかったのだろう。公開時の日本の状況からすると絵空事としか思えなかったのも無理はない。ニューヨークにおけるイスラム原理主義者による爆弾テロの話だが、現実はそれを越えてしまった。以下ネタバレあり。

_ 世界貿易センターがそびえるニューヨークと25人死者を出したバス自爆テロをニューヨーク始まって以来の大事件と報じるテレビのニュースは大昔の話のように思える。しかし、映画の伝えようとするメッセージは今でも新鮮だ。

_ テロの原因がイスラムの一派を途中まで支援しながら、気が変わって見捨て、見殺しにしたアメリカにあるとする見方は公平だ。最後の場面でデンゼル・ワシントン率いるFBIがアラブ人を拷問死させた罪で戒厳令司令官である将軍(ブルース・ウィリス)の逮捕に向かう。ここでデンゼル・ワシントンは、国のために仕方がなかったという将軍に対して、アメリカが守るべきは永年にわたって築き上げた制度であると言って対決する。

_ このセリフを今日「オサマ・ビンラディンの有罪は完全に証明された」と言っているアメリカ大統領に聞かせてやりたい。


2002-12-17 マイノリティ・リポート

_ プリコグと呼ばれる3人の超能力者により殺人事件が予知され、それを犯罪予防局が事前に阻止する。このシステムが実験されているワシントンDCでは6年間殺人事件がおきていないという。

_ フィリップ・k・ディック原作の映画には「ブレードランナー」や「トータルリコール」のような傑作があるが、この作品にはあまり感心しなかった。タイムパラドックスものにはどうしてもウソっぽさがあり、「バックトゥザフューチャー」のような気楽な話だったら楽しめるが、この作品はシリアスなヒューマンドラマを意図しているようなので、無理がある。

_ 考えてみよう。プリコグが殺人を予知するというが、それが阻止されるなら結局殺人はなかったことになる。プリコグは存在しない未来を予知したことになり、前提から成り立たない。

_ プリコグは「殺人」ではなく「殺意」を察知して、その延長線上にある蓋然性としての殺人をイメージしたと考えることはできる。しかし、殺意は必ず殺人に帰結するものではない。常識で考えてみても、計画された殺人はさまざまな理由で遂行されないことがあるだろう。それは犯罪予防局の介入があった場合のみ未遂に終わるわけではない。プリコグは犯罪予防局が阻止しなければ遂行されるだろう犯罪のみを予知するというのだろうか?

_ さらに意地悪く考えてみよう。犯罪予防局が阻止した犯罪の加害者(本当はまだなにもしていないのだが)にはある刑罰が課せられる。では、たまたま人通りがあったから殺人を断念した人は罰せられなくてもいいのだろうか。この問題を突き詰めていくと刑法の基本問題に行きつき、現行の刑法が矛盾に満ちたものだということが分かってくる。その話はまたの機会を見てすることにして、タイムパラドックスの話にもどる。

_ 私は決定論を信じているので、そもそも変えられる未来があるとは思わない。私がこの原稿を書くことも、あなたが今これを読んでいることも、すべてビッグバンの時に決定されていたことで、だれも変えられない。全宇宙のある時点における全ての粒子の位置と速度が分かれば、その次の瞬間の全ての粒子の状態が分かる。これを続けていけば宇宙の未来が確定的に分かるのだ。

_ このニュートン力学に基づく決定論が量子論(不確定性原理)によってどのような影響を受けるのか、私にとって長いこと疑問だった。最近読んだ本によると、どうやら量子論は人間レベルの未来予測には影響がないようだ。もし影響するとしたら明日の待ち合わせも約束できなくなる。

_ さてこの決定論が私の生き方にどのような変化を与えているかというと、あまり変わりはない。テレビの星占いで悪い運勢出ると、言われたとおり気をつけるし、未来が決まっているからといって努力しないわけではない。考え方としては、いい未来が決まっていると信じてそのために必要な努力をするというところか。


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