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2006-08-19 切腹 [長年日記]

_ 加藤紘一元自民党幹事長の実家と事務所に放火したとされる右翼団体幹部は現場で腹を切って倒れていた。腹からは腸がはみ出ていたとのこと。

_ 私が注目したのは、この男の65歳という年齢だった。三島由紀夫は英雄的な死を遂げるには年齢的な制約があると考えていて、その限界を49歳で自刃した西郷隆盛においていた。

_ この右翼は結局死ぬことはできなかったが、介錯なしに割腹のみで死ぬのは難しい。「一死大罪を謝し奉る」の遺書で有名な阿南陸相はポツダム宣言の最終受諾返電の直前の1945年8月14日の夜陸相官邸で腹を切り、介錯を拒み、翌15日朝絶命した。偶然動脈を切るなどしなければ腹を切っただけではなかなか死ねないのだ。

_ 介錯なしで一人で確実に死ぬには三島が「憂国」で書いたように割腹後首に刀を当てて頚動脈を切る必要がある。しかし、これも腹を深く切った場合には困難な作業になるだろう。

_ 切腹いう自殺の形態はたぶん日本に特有なもので、他の方法による自殺とは性質を異にしている。よく、死んで詫びるというが、首を吊ったり、電車に飛び込んだり、という安易な自殺は責任をとったことになるのか疑わしい。死は誰にでも訪れるもので、それを自ら早めたとしてもいかほどのことか。金を借りていた人が返済日前に払ってきた程度のことではないか。特に、昨今のイスラム自爆テロは、それで天国に行けると思ってやっているのであれば、責任とは無関係の自分勝手な死ではないか。

_ 切腹の特異な点は、死ぬという目的には不必要な要素が多く、効率的な方法ではないところにある。それは、多大な苦痛を伴うがその割には致命傷にならず、途中で止めようと思えば可能で、怪我をしただけで引き返すことができる。強い意志と体力がないと目的を達することができない。すなわち、切腹は単に死という結果を生ずる手段ではなく、一つの表現行為なのだ。それは単なる終止符ではなく、最後のメッセージなのだ。

_ 59歳になった私は、65歳で腹を切る意志とエネルギーを持った人がいるということに素直に驚いている。


2006-08-21 高校野球 [長年日記]

_ 昨日はめったに見ない高校野球を見た。駒大苫小牧と早稲田実業の15回引き分け再試合となった熱戦で人並みに感動した。でも、疑問が残った。

_ なぜ高校野球では、3連投、4連投を許すのだろう。プロ野球では、中4、5日が当たり前で連投など考えられない。連投をすれば投手は肩を壊して寿命が短くなるからだ。その理屈が高校野球にも当てはまらないわけがない。むしろ、高校生は身体が出来上がっていないから、その時期に過剰な負担を与えれば影響はより大だろう。

_ では何故そのような無茶をさせるのか。トーナメントである以上連投も仕方がないということか。そうであっても、健康に配慮してある回数以上の連投を禁止するルールを作ることはできるだろう。しかし、そんな動きはないようだ。むしろ、世間は早実斉藤の4連投を見たがっている。ローマのコロッセオに集まってライオンが奴隷を食い殺すところを見る連中のように。アマチュアリズムの負の部分と日本人の集団ヒステリーが合わさるとこのような異常なことが起こる。

_ プロとアマの違いとはなにか。技術の差であると誤解する人がいるが、そうではない。プロは金をもらって仕事をする人で、アマチュアは金をもらわないで仕事をする人なのだ。だから人は、プロ野球選手が連投を拒否し自分の商品価値を維持しようとすることに理解を示す。プロは、もらう金の分だけ仕事をすればいいのである。アマチュアの場合には、プロにとっての金のように仕事の量や程度を画する限界が存在しない。反対に金から切り離されることによって、アマチュアの仕事は神聖化され、それに対する献身が要求されるようになる。

_ 今日の試合で斉藤が肩を痛めて選手生命が短くなったら誰が責任を取るのだろう。日本の常で、誰かが致命的な損害を負うまで誰も何もしないのだろう。

_ 私は、再試合は1週間後の日曜日にすればいいと思う。15回を投げた次の日に9回投げろというのは気違い沙汰だろう。まだ延長を続けた方が一回で終わる可能性があったからよかった。


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