_ アカデミー賞の長編アニメーション賞を受賞したラトビア映画。
_ 黒猫が主人公で、一切セリフがない。人間も登場しない。
_ 洪水に襲われた世界のようで、さらに水かさが増して都市を沈める。その都市も「猿の惑星」のNYではなく、古代ギリシャかローマ風の建物が並ぶ。
_ 黒猫は、流れてきた船に乗り込み、先住者のカピバラや、キツネザル、ヘビ食いどり、犬たちと旅をする。やがて、仲間意識が生まれ、助け合うようになる。
_ というような暖かい物語だが、違和感がある。連中は捕食をしない。肉食を思われるものもいるが、そのような場面はない。唯一の例外は、黒猫が海の中から獲ってきた魚だ。黒猫は器用に魚を獲り甲板に並べる。変なのは、魚が動かないことだ。釣った魚は、普通飛びはねるだろう。その魚を、ほかの仲間が食べる。
_ 登場する動物の動きは自然で、よくできている。しかし、連中の行動は人間的である。船に乗り合わせた人間が飢えても共食いしないように、動物たちもケンカはしても食おうとはしない。そして、仲間の危機に際しては協力して助ける。
_ 結局ディズニー映画なのだ。
_ 魚の扱いが違うのはなぜか。哺乳類は助け合うべきだが、魚は食ってもいいということか。動物愛の西洋の連中が、鯨やイルカの漁を非難するが、ほかの水中生物にはそのような感情を抱かない。
_ 新聞の映画評から、教皇選挙を舞台にした権力闘争の話だと思って観たが、それもあるが、それ以上に内容があってよかった。
_ アカデミー賞の脚色賞を受賞したが、作品、主演男優などの賞の多数のノミネートがあり、一つしか取れなかったのは不運だった。
_ 教皇選挙はシスティーナ礼拝堂で全世界から100名以上の枢機卿を招いて行われる。枢機卿は全員中高年の男性で、派手な衣装をまとっている。この情景は、やくざ映画の襲名披露花会に似ている。全国から集まった親分衆が賭博に興じる。次の権力闘争すでに始まっている。
_ ヒューマントラストシネマ渋谷の午前10時30分の回で観た。上映開始から100分ぐらいたったところで、突然火災警報が鳴り、画面が停止し、やがて明かりがついた。ビルの3階で火災報知器が誤作動したとの説明があった。それから10分ほどで、上映が再開したが、無声映画になっている。音声がないまま10分ほど上映したがまた停止し、上映はできないと説明があり、「特別ご入場券」が配られ、全員退場した。
_ 従って、この映画の批評はできないが、観たところまでの感想とすれば、よくある青春ものというところか。舞台は、関西大学で、2年生の、友達が少ない男女が知り合い、男とバイトが一緒の女を加えた3人の間の淡い恋愛感情を描く。
_ あとでネタバレのレビューを見ると、そのあと、事件が起きるとのこと。しかし、そのような劇的な展開がなくても、いいのではないかとも思える。
_ ちょっと偏差値が高い私立大学の学生の日常はあんなものだろう。時代にしても、現代ではなく、半世紀前の話にしてもおかしくはない。
_ 私は大学2年のとき、この映画のように友達が少ない女子学生を口説こうと思って、文学の話をした(彼女は文学部だった)。オリエントという喫茶店で待ち合わせて、サンテグジュペリの「南方郵便機」について話した。彼女はサンテグジュペリのファンだった。結局数回会っただけで交際は発展しなかった。やがて彼女は海外留学し、連絡は途絶えた。
_ 10年後偶然彼女と再会した。その時の話をしたが、彼女は学生時代は恋愛には全く関心がなかったとのこと。