_ この映画を監督したのはほとんどが息子の健太だが、映画の文体は正に欣ニのものだった。
_ 深作欣ニ作品の重要なテーマのひとつは権力との闘争だと思うが、この映画はそれを最もストレートな形で出している。
_ 「すべてのオトナに、宣戦布告」というのがこの映画のコピーだが、すぐに大人になってしまう連中がこのようなことを言うのはおかしいと批判する人がいる。しかしコドモとオトナは何も年齢だけで分けるものではない。ここでいうオトナは権力の座に坐って、保身に汲々として、変革を恐れるヤカラのことだ。その意味では深作欣二は72才のコドモだった。
_ 深作欣二監督作品は「仁義なき戦い」シリーズのほか何本か観ているが、殺し合いを描くのが好きな人だ。多分描くだけでなく自分でやってみたかったんだろう。
_ 私はこの映画の戦闘シーンを観ていて、自分も一度あのような状況に遭遇してみたいと思った。いわゆる戦争映画を観ていてそのように思うことはないが、普通の中学生が突然戦場に置かれるという設定が刺激的だったのだろう。
_ 今の日本で戦争を経験しているのは80才以上の老人の一部でしかない。戦争は人類の有史以来の営みであって、たぶんこれだけ長い期間戦争を経験したことのない国は世界を見渡してもあまりないのではないか。人間として生をうけて戦争を一度も経験しないで死ぬのはなにか重要なものを見逃してしまうような気がする。戦争がたのしいものだとは思わないが、今日の日本のような生ぬるい世界しか見ないで人生を終えてしまうのは本当に生きたといえるのだろうか。
_ 戦争でなくてもいい。命をやり取りするような状況を経験してみたい。身体がちゃんと動くうちにそのようなチャンスがあるだろうか。三島由起夫のように自分で状況を作り出す能力もエネルギーもないから無理だろうな。