少数意見

最新 追記

2002-07-10 三島由起夫会見記補遺 [長年日記]

_ いくつか書き落としたことがあるので。元の会見記はエッセイの中にあります。

_ 三島のアタッシュケースの中に薬があったと書いたが、ビタミン剤などのビンがごろごろ入っていた。三島は、外人の友達がこれを見て、It's killing you と言っていたと笑った。

_ 途中で電話がかかってきたが、三島は家の外で電話を取った。軒下に電話が置いてあったようだ。その電話は三島が酷評した作家からのもののようで、三島は、「そういう意味ではなくて・・・」と盛んに言い訳をしていた。

_ 会見は終わり方が唐突だった。三島は突然立ち上がり、家の方へ足早に歩いていった。私と町永はビックリして御礼を言おうと立ち上がったが、三島はほとんどそれを聞かずに立ち去った。なにか失礼なことをしたのか、と悩んだが、しばらくして同じような光景をテレビで見た。それは三島がある著名な指揮者と一緒にオーケストラを指揮するという番組だった。指揮を終えた三島が戻ってきてそれを指揮者が拍手で迎えた。しかし、立ち上がって握手をしようとする指揮者を無視して三島は椅子に腰掛けた。指揮者は当惑していた。その指揮者は大柄で少なくとも私くらいの身長ー175cm-はあったろう。三島がそこで立って握手したら160cm弱の三島との身長の差は歴然であった。石原慎太郎と自宅のバルコニーで撮った写真なども、身長を隠すために白いスーツを汚してまで手すりにもたれてポーズをとったとどこかに書いてあった。あの時もそういうことだったのだなと今では思う。


2002-07-23 最近観た映画 [長年日記]

_ 仕事が忙しくて日記が書けませんでしたが、映画は観ています。

_ 「少林サッカー」ーこれは傑作。喜劇というのは、動きなんだなーと思う。チャップリンなんかも、歩くだけでおかしいでしょう。日本には動きだけで笑わせる役者は少ない。

_ 「スター・ウォーズ エピソード2」ーあまりこのシリーズは真面目に観ていなかったけど、これは面白かった。人間ドラマとしてもよかったが、CGがすごかった。いまに人間の役者はいらなくなるのではないかと思った。戦闘場面も迫力があった。こんな映画を観て育った子供は現実がつまらなくなるのではないか、と心配になった。

_ 他に、「スパイダーマン」、「パニック・ルーム」、「ブレイド2」、「メン・イン・ブラック2」、「スコーピオン・キング」、「アザーズ」など。最近の洋画の題はほとんどがカタカナだ。


2002-07-29 老いてこそ人生 [長年日記]

_ 69才の石原慎太郎が自分の老いについて語った本である。

_ 石原はこの本のなかで何回か三島由起夫に言及している。長くなるが引用する。

_ 「ヘミングウェイの自殺と違って、自衛隊の師団本部に乱入しクーデタをそそのかす演説をぶち、呼応せぬ相手を見て自決してしまった彼の挙動に悲劇性がまったく感じられず、リアリティーが欠けてどこか滑稽にさえ感じられるのは、彼が保有していた肉体が肉体として機能することのないしょせんフェイクなものでしかなかったから、老いによってそれを失うという恐ろしさを感じさせ得ない肉体でしかなかったからです。つまり三島氏は結果として肉体が老いて衰退していくという実感を持ち得なかった。三島氏は老いることの本当の口惜しさ、恐ろしさを実は知ることが出来なかった。彼がそれを知っていたなら彼の文学は死んでしまう前のように突然の衰退を示しはしなかったと思います」

_ これを読んで不愉快になった。石原のように元々肉体に恵まれた人間に、三島のように必死の努力の末フェイクかもしれないが見られる肉体を獲得した人間の気持が分かるか。以前別の本で石原が「ボディービルでは身長は伸びない」といっていたことを思いだし、さらに不愉快になり、本を投げ出した。

_ でも数日後、また本を手に取り読み出した。そして最後の部分に次の文章があった。それは、石原が防衛庁の高官から極秘裏に見せてもらった写真についての記述だあった。

_ 「撮したのは自衛隊の撮影班で、三島さんたちに気づかれないように外側に立てた脚立に乗って欄間ごしに証拠写真として部屋の中の様子を撮りまくった。そこに部屋の中で率いた楯の会の会員たちにあれこれ指図している三島さんが写っている。もうその後数分で割腹自決する三島さんのその顔というのが、澄みに澄んで、実にさわやかで平明ななんとも美しいものでした」

_ 「死ぬことを決めてしまった人間というのは、覚りきったという以上に、こんなに清明な顔になれるのかと思わず感嘆するほどだった」

_ 実はこの写真の話は以前確か日経新聞に載った石原の随筆で読んだことがあったのだが、あらためて三島さんに読ませてあげたかったと思うと、涙が出た。でも最期の三島はスターでも有名人でもなく、自分を見ているもう一人の自分もいない、無名のテロリストだったのだろう。だから自分の写真にも興味がなく、自分がどう見えるかにも関心がなく、立派に死ぬことだけを考えていたのだろう。

_ この本を読み終わって、結局石原も老いと死については私と同じくらい困惑し当惑していることが分かり、親しみを感じた。


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