_ 斉藤佑樹の人気がすごい。キャンプ地の鎌ヶ谷には松井や松坂のときをはるかに超える報道陣が集まったとのこと。
_ 斉藤の野球選手としての資質は松井や松坂に及ばないだろう。しかし、斉藤は「何か」を持っている。それが多くの人を惹きつける。
_ 斉藤はその「何か」が「仲間」だと言った。それも一つかもしれないが、世間は「強運」だと思っている。それも単なる強運ではなく、何か神がかったものを感じている。
_ 去年の斉藤最後の早慶戦を見てみよう。早稲田は一勝すれば優勝という状況で二連敗し、斉藤の出番がきた。これをドラマと考えれば、よくある筋で、陳腐と言える。
_ 斉藤は8回1アウトまでノーヒットノーランできた。初めてのノーヒットノーランで優勝投手になればすごいと誰もが思った。しかし、その後斉藤は打たれ5点を取られて降板し、大石投手や打撃陣に助けられてやっと勝利投手になった。そして、試合後の会見であの有名になった「その何かは仲間」の発言があった。
_ 斉藤が「仲間」発言を予め考えていたかどうか分からないが、もしノーヒットノーランを達成していたらいやみに聞こえただらう。他の投手や打者に助けられて勝利投手になって初めてあの発言が生きてくる。
_ そう考えると、このドラマの脚本家は並みの技量の持ち主ではないことが分かる。
_ 斉藤のドラマは、ヒーローがいい場面で登場して勝利するというように単純なものではなく、もっと大きな感動につながるものだ。そこには、個人の強運を超えた力が働いているように人は感じる。それを神と呼ぶ人もいるかもしれない。
_ 斉藤に対する異常ともいえる関心は、願っても何も実現しない人々が、斉藤を通じて大きな力のおすそ分けを求めているということかも知れない。