_ 反日映画として話題になったが、そうは感じなかった。
_ 日本国内の捕虜収容所が主な舞台だが、捕虜が体操をするところとか、捕虜が白雪姫の演劇を女装してやるところとか、人間的な場面もある。サウルの息子を観た後ではむしろ日本は甘かったのではないかとさえ思える。日本人にはナチスドイツのような冷酷さは無理だ。
_ 捕虜虐待の場面は多いが、大部分が主人公のルイに対する渡辺伍長の仕打ちだ。これは渡辺の役をミュージシャンのMIYAVIが演じたことから、戦場のメリークリスマスの坂本龍一とデビッド・ボウイの関係かと想像していたがそうではなかった。戦メリの場合は明らかにホモの感情が伝わってきたが、この作品では単なる虐待でしかなかった。
_ ルイの役者は実在の人物に似た俳優を選んだようだが、いかんせんボウイのような色気はなかった。戦メリはボウイあっての名作だということが分かる。
_ 独身者は施設に拘禁され45日以内にパートナーを見つけないと動物にされるという国のお話。
_ 異常な世界に主人公が送り込まれる映画はたくさんあるが、たいてい主人公だけは正常だという設定になっている。この作品は主人公もかなりおかしい。
_ 登場人物はみなエキセントリックで、それは現実世界の風刺を意図しているのではなく意味なく変わっている。
_ アイルランド、イギリス、フランス、ギリシャ、オランダの合作で主として英語が話されるが少しフランス語の会話が入っている。なぜそこだけフランス語なのかは分からない。英語は外国人が話すような発音で、それが不思議な雰囲気を醸し出している。