_ 4月29日京王プラザホテルで中学卒業44年目の同窓会があった。
_ 「あの頃ジュンと私は付き合っていたんだよね」とチャコ。
_ 1962年中学2年14歳のチャコと私は(今時のイミではないが)付き合っていた。周囲からはカップル(という言葉は当時はなかった)と認められ、彼女は「奥さん」と呼ばれて喜んでいた。でも、誰かが校舎の壁に大きく二人のイニシャルを入れた相合傘を描き、それが朝礼で取り上げられ、しばらくして二人は別れた。
_ 14歳という年齢は、純粋な恋愛が可能な最後(で最高)の年ではないかと思う。恋に関する感受性は大人のレベルに達し(それ以降はむしろ鈍磨するような気がする)、世間やしがらみから自由で、責任がない。「好きだ」という感情だけで生きて行ける稀有な時期なのだ。
_ 私の場合は、チャコを失った後で「好きだ」という感情がより純化され、苦しみの中に恍惚を感じるようなマゾヒスティックなものになっていった。忍ぶ恋が至極であると同じ理由で、失われた恋は記憶の中で無限に美しくなる。
_ チャコは、自分が冷たい態度を取ったのは、こわくなったからだと言った。大学に入ってからも、共通に使っている駅で、電車を降りて前を歩いている私を認め、何回も謝りたい、声をかけたいと思ったが、出来なかった。
_ そう言うチャコの横顔を見ていると、44年という歳月が霧が晴れるように消え去り、2Cのクラスの教室で話しているような気がする。
_ 「でも、いい夢だったね」「本当にそう」
_ 14歳。6ヶ月間の夢。