_ 15年前の今日、私が朝家を出る直前、ワイドショーの司会者が、今入ったニュースということで、霞ヶ関駅でシンナーのようなものが撒かれた、と言った。私は家人に、「サリンが撒かれたようだ」と言って家を出て、地下鉄を使わずに出勤した。
_ それがサリンだということは、新聞をちゃんと読んでいれば容易に知りえた。
_ 前の年の六月には松本サリン事件があり、その年の元旦の読売新聞にはオウムの拠点がある上九一色村でサリンの残留物が検出されたという記事が載り、二月には目黒公証役場事務長が拉致された。そして、事件の5日前には、小さな記事だったが、霞ヶ関駅構内で蒸気を出すアタッシュケースが放置されていたとの報道があった。このアタッシュケースはオウムが作ったボツリヌス菌発生装置であることが後日分かった。
_ これらの事実を綜合すれば地下鉄で撒かれたのがサリンであることは簡単に推測できる。
_ 警察は新聞以上の情報を持っていたはずだから、地下鉄でのサリン撒布は予測できた。柔軟な頭脳があれば。
_ 戦争は男が好きな遊びだ、という映画。戦争の麻薬的な魅力を描く。
_ ビグロー監督は、この映画をイラクで戦うwomen and men に捧げるとアカデミー賞受賞スピーチで言ったが、映画には女性の兵士は登場しない。
_ この映画には、戦争を正当化する「正義のための戦争」、「自由のための戦争」、「人民解放のための戦争」とかいう偽善的な言葉は出てこない。戦争はただ面白いのだ。
_ ジェームズ二等軍曹は、職人が細工物をつくるように、細心の注意をはらって爆発物を処理する。職人と違うのは、一つ一つの作業に命がかかっているところだ。
_ 砂漠での銃撃戦は美しかった。双眼鏡でやっと見える敵と長い間対峙し、狙撃する。命中したときの喜びは狩猟に優るだろう。狩猟とは違って仲間も何人か死んだが。敵に対する同情はない。野鳥や鹿に対して同情しないと同じことだ。
_ ジェームズがアメリカにいたときの短いエピソードが挟まれる。玩具で遊ぶ幼い息子に、子供のころ楽しかったものが大人になるとだんだん無くなってくる、今の自分には一つしか残っていない、と語りかける。
_ 最後の場面は、新しい部隊に配属され、防護服を着て、嬉々として仕事に臨むジェームズが映される。
_ 女性監督が、男の世界の真実を見抜いているという皮肉。