_ 渋谷のシネクイントで観た。派手なところはないが傑作。
_ 東京の上流階級の華子を門脇麦、富山から出てきた美紀を水原希子、政治家の家系の弁護士青木幸一郎を高良健吾が演じる。
_ いうまでもなく、東京と地方には断絶があり、さらに東京にも階級があって異なる階級の者は出会うことも少ない。
_ 美紀は、慶応に入るが家が貧乏で中退してキャバクラで働く。在学中にノートを貸した(そして返さなかった)男が客としてきて肉体関係になる。よくある話で、階級の違う男女が出会う一つのカタチだ。
_ 東京の中にも階級があるというのは感じてはいたが、映画ではっきり描かれるのは初めてではないか。
_ 私の家は中の上くらいだったが、親戚が集まると、祖父、親、叔父、伯父などみな東大で、それも法学部以下は一段下。そんなのが大嫌いだった。
_ 私は青木幸一郎の立場になるのかもしれないが、思いっきり反抗したのでその点は満足で後悔はない。その結果母親はじめ苦しめた人はいたが仕方がない。
_ 日経で星4つの評価だったが、それほどの傑作ではない。しかし、時間がたつといろいろと考えさせる映画だと思った。
_ 「花束のような恋」とは、期間限定で燃え上がる恋のことか。花束は造花と違って枯れる。しかし、美しかった時の記憶は残る。
_ 50年近く前そんなことがあった。私は、所属事務所から留学を許可され、ミシガン大学ロースクールに行った。その前に、米国の主要ロースクールが外国人留学生のために設けたオリエンテーションがワシントンDCであった。そこで彼女に会った。2歳年上の小柄でかわいい人だった。
_ 彼女は、ニューヨーク大学に行くことになっていたが、ニューヨークには行ったことがなかった。私は、子供のころにニューヨークに住んでいたので、彼女をニューヨークの観光に連れていくことになった。
_ 2人でアムトラックの列車に乗り、ホテルは二部屋とり、一泊した。私が寝坊したら彼女が扉をたたいて起こしに来た。
_ どこを見て回ったかよく覚えていないが、エンパイアステートビルのてっぺんに上ったのは覚えている。彼女は眼鏡を変えたとのことで、世界はこんなに美しいんだ!と感激していた。
_ オリエンテーションは2週間ぐらいだったと思うが、彼女を最後に見たのがどこであったか覚えていない。それぞれの大学に別れてからも手紙を交換した。お互いに恋愛感情を持っていたと思う。彼女は、ロースクールが終わってもNYの法律事務所で研修し、やがて手紙は来なくなった。
_ 手紙は書かなくなったが、年賀状は交換していた。お互いに東京で働いて、同じ渉外弁護士だったのに、会えなかった。彼女は、一度会おうと年賀状で書いてきたが、なぜかそれ以上の行動はなかった。
_ 最後の年賀状には、「お元気ですか。私はすこし年をとり、でも変わらずに働いています」とか書いてあった。その年の暮れに彼女の姉から喪中のはがきが来た。10月に亡くなったと。
_ HUMAXシネマで観た。面白かった。
_ 成田凌がさえない予備校教師の大野で、清原果那が自己主張が強い女子高生。テーマは何が普通で何がまともじゃないのかということ。結構難しい。
_ 日本人には普通願望があって、自分が普通でない(まともでない)ことをとても気にする。その結果同調性が強くなり自分がなくなる。
_ 日本人に限らず、人間には、人に同調する人間、人を同調させる人間、どちらでもない人間の3種類がありそうだ。最後の第3種はさらに、自分の意志で同調しない人間(3-1)と同調したいけれどできない人間(3-2)に分かれる。
_ 映画の大野は、3-1が大半だが3-2の意識もあるキャラだ。
_ 自分のことを考えてみると、3-1と3-2が半々というところか。第1や第2類型ではない。いや、外見的には第1類型かもしれない。他人と話すときは、自己主張はしない。特に大勢で話すとき。そのような場で、自分の主張(たいていくだらない)を長々話す無神経な第2類型には辟易する。その間他人の時間を浪費していることをなんとも思わないのか。
_ 私のような人間にとってはコロナで人と会わなくていい世界はすばらしい世界だ。普通の人間と普通の会話をして時間を無駄にすることがない。