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2005-01-18 深田恭子

_ 「下妻物語」で感激して、深田恭子の過去の作品を観ようと思った。彼女に初めて注目したのは北野監督作品「Dolls」で(この映画については2002年10月22日に感想を書いた)、それまでは関心がなかった。深田恭子が演じた「Dolls」の歌姫はそのファンが命を投げ出してもいいと感じるほどの存在で、地上界にはいないような人でなければならない。その意味で北野監督のキャスティングは見事だった。

_ しかし、深田が出演したその他の映画やテレビドラマにはあまりいいものがなかった。その多くが、あまり頭の良くない、気が強い、わがままな女の子の役で、全く彼女の個性を生かしていなかった。

_ そして、最後に深田恭子のテレビドラマの最初の作品である「神様、もう少しだけ」(1998)にたどり着いた。彼女が演じるのは、HIVに感染した援交女子高生で、これで見たテレビドラマの役柄と同じようだな、と思った。でも、ストーリーが面白く、9話を2週間で観てしまった。1週間おいて、TSUTAYAからビデオのVol.4を借りた。日曜日の夜、一人で部屋のテレビで観はじめた。一気に、物語の世界にひきこまれ、気がつくと涙していた。難病ものは好きではなく、感動したこともなく、まして泣いたことなどない。泣かせるような話は、簡単に見破れ、感動などするわけがない、と思っていたのだが・・・。

_ 「神様、もう少しだけ」のストーリーは奇をてらったものではなく、むしろオーソドックスな感じがした。次の場面を予想するのも困難ではなかった。しかし、予想どおりの展開でまた泣かされてしまう。翌朝かがみを見たらまぶたが腫れ上がっていて、濡れタオルで30分も冷やさなければならなかった。

_ こんなに映画で泣かされたのは初めての経験で(現実でもない)、歳をとって涙もろくなったのかな、とため息をついた。ヤクザ映画の男気に感動して泣くことはあっても、女子供のように(!)お涙頂戴のテレビドラマに泣かされるとは思わなかった。

_ 冷静になって、少し分かってきたことは、「神様、もう少しだけ」は、ただ泣かせるだけのドラマではなく、もっと硬派の内容を持っているのではないかということだ。つまり、このドラマで深田恭子は毎回何度も泣くが、決してナヨナヨ泣くのではなく、怒りながら泣いている。彼女は泣きながら高校の卒業式の後演壇に登り自分がHIVに感染していることを告白しそれでも自分らしく強く生きていくことを宣言する。就職が内定した会社にもHIVのことを告げ、内定を取り消されてしまう。そう、彼女は自分の信念を愚直に貫いて、傷つき、それでも強く生きようとする。

_ 「神様、もう少しだけ」は、「下妻物語」の桃子の話の裏面ではないか。「下妻物語」では、桃子が、高校の教室で皆から離れて一人で弁当を食べている姿が描かれている。イチゴが「友達がいなくて寂しくはないのか?」と訊くと「全然」と答える。「下妻物語」は桃子の日のあたる強い一面を描いているが、その裏には「神様、もう少しだけ」に描かれる涙にまみれた姿があるのだろう。そして、この陽と陰の二つの顔が深田恭子の中にもあるのではないか。深田恭子は、苦悩しながら、「神様、もう少しだけ」の叶野真生のように今の一瞬を一生懸命生きようと思ったり、桃子のように「気持ちが良ければOKジャン」とつぶやいたりしながら、大女優への道を着実に歩んでいるように思える。


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