少数意見

最新 追記

2004-12-04 ハウルの動く城 [長年日記]

_ 宮崎駿はどうしてしまったのだろう。

_ 絵はきれいだったし、音楽はよかったし、キムタク等の役者も頑張っていた。しかし、ストーリーが頭に入ってこない。

_ 途中で眠くなってしまって聞き漏らしたところもあるかもしれないが、たとえば、誰が誰に対して何の為に戦争しているのか、ハウルは何故それに参加するのか、誰が誰に対して何故魔法をかけて、それはどうすれば解けるのか、何故ソフィーはハウルに恋したのか、何故城が動かなければならないのか、等々分からないところだらけだ。

_ 主役であるはずの城にしても何故あのように巨大である必要があるのか分からない。内部の構造からすれば二階家ぐらいで十分だ。戦争は近代兵器を使って闘われるが、それと魔法の力関係が分からない。最後に魔法使いが戦争をやめさせることになるが、そんな簡単なことなのか。

_ 「千と千尋」であれだけの世界を作り上げた宮崎の作品とは思えない。

_ 昔黒澤明の「赤ひげ」(1965)を観たときのことを思い出す。観客は久々の黒澤の時代劇ということで「用心棒」や「椿三十郎」のような活劇を期待していた。私の前の席には肉体労働者風のおっさんが坐っていたが、途中で席を立って出ていってしまった。

_ 天才にも老いは来るのだ。まあ、黒澤は「赤ひげ」の後も傑作を作ったが、「用心棒」みたいな痛快な作品はもう観られなかった。


2004-12-11 ゴジラ [長年日記]

_ 12月8日の朝日新聞の天声人語に面白いことを書いていたので以下引用する。

_ 97年、映画「ゴジラ」のプロデューサー田中友幸氏が死去したとき、米オハイオ州の新聞に「追悼文」が出た。少年時代の「ゴジラ」をめぐる思い出をつづった記事だった。

_ 60年代前半の米国の地方都市でのことらしい。「ゴジラ」がテレビ放映される日、子供たちは近隣で一番いいテレビのある家に集まった。まだ白黒の時代だった。東京の街を破壊する怪獣のすさまじさに、子供たちは圧倒され「おい、見ろよ」と口々に言いながら見入ったという。

_ そのころ原爆や水爆を、子供たちは単に「爆弾」と言っていた。キューバやソ連の爆弾が配備されていることは知っていた。サイレンが鳴ると、机の下や地下室に隠れるように教えられていた。子供たちの間でゴジラは何者かを熱心に議論したが、あの怪獣は、まさにすべてを破壊しつくす「爆弾」だったのだと筆者は回顧する。(以下省略)

_ 私は1957年の後半から1960年の前半まで父の仕事の都合でニューヨーク市のクイーンズ地区に住んでいた。多分1958年だったと思うがテレビで「ゴジラ」を観た。それは日本で公開された映画を解体してアレンジし、アメリカ人の特派員が東京で体験した出来事を描いた映画に作り直したものだった。それでも特撮の部分はフルに活用され迫力があった。別に高級住宅地ではなかったが、多分すべての家庭にテレビはあり、集まって観ることはなかった。次の朝小学校の教室ではこの映画の話で持ちきりだった。「東京は大変だったんだなー」と同情してくれる者もいたが、「アメリカだったら原爆があるからすぐやっつけられるさ」とうそぶくやつもいた。原爆のことはbombとかthe bombではなくA-Bombと言っていたと記憶している。

_ サイレンが鳴って机の下に隠れる訓練はよくやった。キューバ危機の前だったが、戦争は身近なものと感じていた。

_ ゴジラについては、1976年にミシガン大学での勉強を終えてニューヨークで研修をしていた頃、マンハッタンの多分5番街だったと思うが、歩道に大きな足跡が描いてあった。巨大なスタンプを作ったやつがいたのだ。その足跡のなかにGodzilla was here と書いてあった。有名なんだなーと、ちょっとうれしく思った。


2004-12-25 「武蔵」事件判決 [長年日記]

_ 敗訴という結果になったが、納得のいかない判決だ。

_ 日経新聞にも引用されていたが、三村裁判官は「「七人の侍」を映画史に残る金字塔たらしめた脚本の高まいな人間的テーマや高い芸術的要素は、「武蔵」の脚本からはうかがえない」と言って、これを「「七人の侍」の本質的特徴を「武蔵」から感得することができない」理由の一つとしている。

_ その理屈でいくと、志が低いか、無能な者の作った劣悪な贋作は盗作にはならないが、原作に尊敬の念をもった有能な者が、原作に近い芸術的な価値のある作品を作った場合は盗作になるということになる。

_ 著作権とは離れるが、これをバッグに当てはめて考えてみよう。

_ 「ルイ・ヴィトン風」と宣伝されたバッグが二つあったとする。一つは使い始めてから三日で穴があいた。もう一つは品質が良く本物に近い満足感が得られた。何れもニセモノだが、どちらがより非難に値するだろうか。品質の悪いニセモノは高品質という要素までは真似ていないから許されるという議論は通るだろうか。

_ 「武蔵」は放送前のテレビ欄に「「七人の侍」風アクション」と紹介されていた。確かに「七人の侍」の有名なシーンに似たシーンがいくつもあった。しかしそれは無理に持ってきたもので、「七人の侍」風に見せるだけの意味しかなかった。感動を期待した人は失望し「高まいな人間的テーマや高い芸術性」などなく、形だけ似せたにすぎないと思った。それが幸いしてか「武蔵」は盗作ではないとの判断が下った。下手な真似をして芸術性がなければ許されるということだろうか。


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