_ 敗訴という結果になったが、納得のいかない判決だ。
_ 日経新聞にも引用されていたが、三村裁判官は「「七人の侍」を映画史に残る金字塔たらしめた脚本の高まいな人間的テーマや高い芸術的要素は、「武蔵」の脚本からはうかがえない」と言って、これを「「七人の侍」の本質的特徴を「武蔵」から感得することができない」理由の一つとしている。
_ その理屈でいくと、志が低いか、無能な者の作った劣悪な贋作は盗作にはならないが、原作に尊敬の念をもった有能な者が、原作に近い芸術的な価値のある作品を作った場合は盗作になるということになる。
_ 著作権とは離れるが、これをバッグに当てはめて考えてみよう。
_ 「ルイ・ヴィトン風」と宣伝されたバッグが二つあったとする。一つは使い始めてから三日で穴があいた。もう一つは品質が良く本物に近い満足感が得られた。何れもニセモノだが、どちらがより非難に値するだろうか。品質の悪いニセモノは高品質という要素までは真似ていないから許されるという議論は通るだろうか。
_ 「武蔵」は放送前のテレビ欄に「「七人の侍」風アクション」と紹介されていた。確かに「七人の侍」の有名なシーンに似たシーンがいくつもあった。しかしそれは無理に持ってきたもので、「七人の侍」風に見せるだけの意味しかなかった。感動を期待した人は失望し「高まいな人間的テーマや高い芸術性」などなく、形だけ似せたにすぎないと思った。それが幸いしてか「武蔵」は盗作ではないとの判断が下った。下手な真似をして芸術性がなければ許されるということだろうか。