_ ネタばれあり。
_ 園子温監督作品。園作品を観るのは8本目で、これまで一番好きだったのは「愛のむきだし」。
_ この作品は、監督が25年前に書いた脚本に基づいているとのことで、元はバブル時代を背景にしていたそうである。それを東京オリンピックを5年後に控えた現在に移している。時代は一巡りしたのかもしれない。
_ ロックシンガーを志していたが挫折したさえないサラリーマン(長谷川博己)がデパートの屋上で買ったミドリガメに夢を語る。カメは長谷川の欲望が膨らむに応じて巨大化していく。それと並行して捨てられた人形やおもちゃが住む地底の世界が描かれる。そこの主が西田敏行扮する老人だ。
_ 人形はしゃべり、巨大怪獣と化したカメはビルをなぎ倒すが、いずれも動きがぎこちない。昔の特撮のストップ・モーションでかなり粗い。監督は意図的にこのようにしたようである。
_ 思うに、我々はCGに慣れ、古代の生物が動き回る世界にも驚かなくなっている。しかし、虚構が現実を模して現実と見まがうばかりになっても、現実が退屈であれば退屈は虚構世界を汚染してく。
_ この作品の不自然な動きをする人形やカメは、その世界が作り物であることを自ら示している。作り物だから現実世界との連絡通路はなく、現実を覆う退屈がその世界に浸透していくことはない。夢の世界は現実から隔絶してこそ、その完全性、純粋性を保つ。園監督は夢(たぶん少年時代の自身の夢)を大切にするから、あのような技法を使ったのだろう。
_ ネタばれあり。(以後表示せず)
_ 絵はきれいだったがストーリーがつまらない。後半は特にひどい。
_ 渋谷の裏に渋天街というバケモノの世界があるという着想は面白い。しかし、描かれた世界は住人が獣の顔をしているというだけで驚きはない。
_ さらに問題なのは、最初は一度入ったら現実世界に戻れないと思われたのが、後半では自由に行き来できるようになっている。挙句の果てには、主人公である少年のガールフレンドがついてくる始末だ。そして、このガールフレンドはアメリカ女のように出しゃばりだ。
_ 少年は彼女の助言で大検を受けることを決意するというあきれたハッピーエンド!
_ 異界を描くのなら現実世界とは隔絶した世界にすべきだろう。出入り自由な異界など何の魅力もない。
_ マーベル・コミックのヒーローチームが人類の敵と戦ういささか荒唐無稽な作品。
_ 今回は人工知能が隕石の衝突による大量滅亡(恐竜が滅びたといわれる)の再現を企てる。興味深いのは人類の滅亡がひとつの進化と考えられていることだ。確かに恐竜が滅亡しなかったら人類どころか哺乳類の世界はなかっただろう。
_ ハリウッド映画をはじめとして欧米の映画には人類の滅亡と生き残った少数の人間の世界を描いたものが多い。猿の惑星、ターミネーター、マッドマックスなど多数。
_ ノアの箱舟などキリスト教の世界観には終末論の色彩があるようだが、それ以上わからない。映画について見ると、日本の怪獣物は自然の猛威を具象化したとも考えられるが、その害悪は人類を滅ぼすまではいかない。ゴジラのようにシリーズの後半になると人類と一緒に敵と戦うようになる。日本人はあまり終末論になじまないのかもしれない。