_ 二回目の会見があった。
_ 厚顔無恥な記者たちの態度は驚くに値しないが、彼らを含めた社会の変わり身の早さは日本ならではと言える。
_ 変化が起きたのは3月のBBCの番組からだと思うが、それから半年余りで60年間日本の芸能界に君臨してきたジャニーズ事務所が消滅すると。マスメディアを含む日本人は多くが噂では問題があることを知っていた。しかし誰も行動には移さなかった。
_ これは、統一教会の問題と似ている。統一教会が問題であることは、噂では多くの日本人が知っていた。しかし、社会が動いたのは山上徹也が安部を銃撃してからだ。
_ BBCは外圧で山上は犯罪者で両者は違う。しかし、日本社会から見れば、外人も犯罪者も異物である。日本社会の同調性は、社会が自らを自分で矯正することを妨げている。日本社会の矯正は異物の刺激で開始し、ともすれば行き過ぎる。
_ 昨日の「報道特集」でやっていたが、力の入ったものだった。今度は、過去30年の経営陣にもインタビューしたらいい。
_ 拙著「黒澤明の弁護士」の第1章に、私が勲章の件で黒澤さんにゴマすりを図り失敗したエピソードを書いたが、忖度が生じる環境は、いろいろな職場で共通な部分があるのではないか。
_ テレビ局のジャニーズ事務所に対する忖度は、ジャニーズ事務所は怖いという認識が定着してしまうと、ジャニーズ事務所からの具体的な行動がなくても、代々社員に受け継がれていって、慣習になってしまうようだ。
_ 黒澤さんが怖いということは、伝説になっていて、私のような部外者にもその場の空気から皆の緊張感が伝わってきた。実際は、黒澤さんは私に対しては優しく、一度も怒られたことはない。
_ 今度の、検証でも、ジャニーさんをジャニーズJrや大成したジャニーズのタレントが慕っていたという発言があった。たぶん本当なんだろう。黒澤さんについても、優しかったという人が多い。
_ 今回のジャニー喜多川の事件は、許しがたい犯罪としてとらえられている。刑事事件としては、その通りだ。しかし、人間の悪としてみると、あいまいなものがある。
_ ブラック企業のパワハラのように我欲による行為であることが明白な場合と違い、蜷川幸雄が怒ると灰皿を投げつけるという話は、芸術家ということで許されていた。黒澤さんが怒鳴るのも、誰もパワハラとは言わなかった。
_ ジャニー喜多川は日本の芸能史における一つの時代を築き上げた。ジャニーズというアイドル集団は、ジャニー喜多川の趣味によって成立する。それは、彼の少年愛と切り離せないものだったのだろう。
_ 石井裕也監督作品。
_ 重度障害者施設、やまゆり園の事件を描いた作品。犯人の思想が披歴されていて、説得力がある。監督としては、そのような思想を否定するヒューマニズムを提示したかったのだろうが、成功はしていない。
_ 犯人には論理がある。それを否定するには、より鋭い論理で対抗するしかない。しかし、それは難しい。彼は、正論を述べているのだ。
_ 本作は、情を盾にして論理に対抗しようとする。それしかないだろう。ただし、情は揺れ動く。今回のハマスとイスラエルの件を見れば明らかだろう。どっちにも情はある。
_ 本作では、意思疎通ができない42歳の女性患者とその母親が出てくる。ほかの患者の親族はめったに見舞いにも来ないが、この母親は娘と心が通じている(と信じている)。もう一人、看護師の女性の長男がいる。心臓疾患のため、話もできないうちに3歳で死んだ。
_ 意思疎通ができない者を殺していいのなら、これらの二人はどうなんだ。親は、意思疎通ができなくてもかわいいのだ。殺される者の親の気持ちをどう考えているのか。と犯人に問う。
_ 観客はこの情による反撃に動かされるだろう。しかし、立ち止まって考えてみると、悲しむ親族のいない意思疎通ができない患者はどういう位置づけになるのか。悲しむ者がいる人といない人で命の価値は違うのか。
_ もっと飛躍すれば、飼い主と意思疎通ができるペットがいたら、その命はどこに位置するのだろうか。