少数意見

最新 追記

2003-12-04 ビギナー [長年日記]

_ 司法研修所を舞台にしたテレビシリーズで面白い。

_ 男女4人ずつの修習生がグループで研修所の課題に取り組んでいく。一流の法律事務所が監修しているので結構勉強になる。

_ 番組評ではあまり芳しくないのだが、日本ではあまりこの手のドラマは受けないのだろうか。議論が多く時にはかなり厳しい発言もある。堤慎一が財務省を不祥事で退官した元高級官僚の役で出ているが、彼には「ずっとエリートできたやつには弱者の気持ちなどわからない」という言葉が浴びせられる。司法修習生は半分学生のようなものだけど、社会人だった人も多く互いに学生同士のように気楽に話せるわけではない。現実の修習生はあそこまで突っ込んだ会話はしていないだろう。だから評者からはリアリティーがないと言われるのだろう。

_ 確かに、激しい議論をして険悪な雰囲気になり、どうなるのだろうと思っていると次の場面では仲直りしている。現実はあんなふうにはいかないなと思う。しかし、日本語で聞いているから議論が激しく感じるのかも知れない。あれを英語でやればよくある普通の会話だ。アリーマイラブではもっとすごい言葉が飛び交い時には訴訟にまでなるが、それを変だとは思わない。

_ 自分でも英語で話しているときは別な人格を感じるときがある。日本語だったらここまでは言わないなというようなことを平気で言っている。そして議論が終ると笑顔で握手している。


2003-12-10 マトリックス レボリューションズ [長年日記]

_ この映画の中に「風の谷のナウシカ」とそっくりな場面があった。他にも気づいた人がいるかとネットの検索(マトリックスとナウシカで)をしたら、いたいた大勢いた。中には映画が終ってからもナウシカの音楽が頭の中をグルグル回っていたという人までいた。どの場面かは敢えて書かない。というかメンドウなんで。

_ ナウシカの他ガンダムやドラゴンボールとの類似を指摘する人もいて、2/3は日本のアニメのパクリだという意見もあった。私はマトリックスや日本アニメの専門家ではないので論じる資格はないが、著作権については一応プロなので考えてみた。

_ 著作権侵害でマトリックスの製作会社であるワーナーブラザーズを訴えられないか。

_ 日本では映像同士の著作権侵害に関する判例が少なく、どこで線が引かれるかはっきりしない。たとえば、作品の主題、ストーリーの展開、登場人物の設定、主要なエピソードなどを全てパクれば著作権侵害は明らかだ。典型的なものとしては黒澤明の「用心棒」を真似した「荒野の用心棒」。今年の初めに話題になった某テレビ局の大河ドラマもそうかな。

_ 今回の「マトリックス レボリューションズ」が「風の谷のナウシカ」から取って来たとみんなが問題にしているシーンは多分3分ほどのもので他にストーリーとか登場人物とかが似ているわけではない。(もっともオームみたいなキカイが出てきたが。)でも多くの人が観終わった後あれはナウシカだと思い、他の人と話す。実は私も劇場から出てすぐに友人にナウシカとそっくりな場面があったとメールした。

_ 何が著作権侵害になり何がならないかの一般的な判断基準を作るのは難しい。とくに映像の場合は一瞬の画が全体を染め上げることがあるので長さは問題でない。結局最後は観客の印象で判断するしかないのではないか。

_ たとえば今回のマトリックスの最後のネオとスミスの豪雨の中の決闘は「七人の侍」の豪雨の中の野武士との合戦に似ている。でも、この程度なら観客はニヤリとするくらいだろう。次に、ネオとスミスの空中での格闘はドラゴンボールで何回も見た気がする(たとえば悟空とベジータ)。この場合も観客の反応は好意的だろう。でもナウシカの名場面が突然出てくると「エッ!ウッソー!」とかなり否定的になりうる。

_ ナウシカのあの場面は独創的で、感動的で、作品全体を象徴するものだ。つまりあの場面だけで「風の谷のナウシカ」を観たことのある人は一瞬の内に作品を貫く思想を感じあのテーマ曲が頭の中で奏でられるのだ。従って、私は「マトリックス レボリューションズ」は宮崎駿の著作権を侵害していると思う。


2003-12-29 ラスト・サムライ [長年日記]

_ アメリカ人に時代劇が撮れるわけがないという先入観をもって観はじめた。初めのうちは日本人がインディアンのように描かれるのを不快に感じた。

_ やがてトム・クルーズ演ずるオールグレンが日本にのめり込んでいき面白くなってきた。渡辺謙が知性と野性を兼ね備えた勝元を好演していた。

_ 後半、勝元を討つために大砲やギャトリングガンで武装した政府軍の大部隊が押し寄せる。そのときギリシャのテルモピレーの戦いが話題に上る。紀元前480年ペルシャの大軍がギリシャを攻撃した際スパルタ戦士200人がテルモピレーの天険でくいとめたという話だ。

_ 最後の合戦の前に勝元がオールグレンに尋ねる。「それで、ギリシャの戦いの結末はどうなったのか?」

_ 「全員戦死したよ」とオールグレンは答え、二人は顔を見合わせてニヤリと笑う。ここで涙がでて止まらなくなる。

_ 二人は「玉砕」を確認したのだ。従来のアメリカの思想は「生還の可能性のない作戦は悪だ」というものではなかったか。そんなセリフを何かの映画で聞いた記憶がある(「パールハーバー」だったか)。

_ 観ているときには気づかなかったが、この映画はまるごと三島由紀夫だと思った。三島は昭和43年の「反革命宣言」で次のように述べている。

_ 「われわれは、護るべき日本の文化・歴史・伝統の保護者であり、最終の代表者であり、且つその精華であることを以って任ずる」

_ 「自分自らを歴史の化身とし、歴史の精華をここに具現し、伝統の美的形式を体現し、自らを最後の者とした行動原理こそ、神風特攻隊の行動原理であり、特攻隊員は「後につづく者あるを信ず」という遺書をのこした」

_ 「有効性は問題ではない」

_ これは正に勝元の行動原理ではないか。侍の文化を護るという行為がそれ自体護られるべき文化の精華になるのである。

_ さらに、勝元のモデルは西郷隆盛だという話があるが、勝元の乱は三島が「奔馬」の中で詳しく物語った神風連の乱と酷似している。神風連の乱は明治9年の廃刀令に反発した熊本の志士が起こしたもので、かれらは火器を使わず太刀、槍、薙刀のみで10倍の人数の討伐軍に立ち向かった。

_ 思うに西洋から見れば三島由紀夫こそが the last samurai ではないか。

_ 前にも書いたように三島思想は現在のイスラムの自爆テロにつながっている。この映画の勝元は、武士の文化の最も純粋なものを命をかけて護ろうとしており、これは正に原理主義の思想である。そして三島は日本を代表する原理主義者である。

_ 日本では封印されている三島思想はアメリカの原理主義にも影響を与えているのだろうか。


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