_ この映画の中に「風の谷のナウシカ」とそっくりな場面があった。他にも気づいた人がいるかとネットの検索(マトリックスとナウシカで)をしたら、いたいた大勢いた。中には映画が終ってからもナウシカの音楽が頭の中をグルグル回っていたという人までいた。どの場面かは敢えて書かない。というかメンドウなんで。
_ ナウシカの他ガンダムやドラゴンボールとの類似を指摘する人もいて、2/3は日本のアニメのパクリだという意見もあった。私はマトリックスや日本アニメの専門家ではないので論じる資格はないが、著作権については一応プロなので考えてみた。
_ 著作権侵害でマトリックスの製作会社であるワーナーブラザーズを訴えられないか。
_ 日本では映像同士の著作権侵害に関する判例が少なく、どこで線が引かれるかはっきりしない。たとえば、作品の主題、ストーリーの展開、登場人物の設定、主要なエピソードなどを全てパクれば著作権侵害は明らかだ。典型的なものとしては黒澤明の「用心棒」を真似した「荒野の用心棒」。今年の初めに話題になった某テレビ局の大河ドラマもそうかな。
_ 今回の「マトリックス レボリューションズ」が「風の谷のナウシカ」から取って来たとみんなが問題にしているシーンは多分3分ほどのもので他にストーリーとか登場人物とかが似ているわけではない。(もっともオームみたいなキカイが出てきたが。)でも多くの人が観終わった後あれはナウシカだと思い、他の人と話す。実は私も劇場から出てすぐに友人にナウシカとそっくりな場面があったとメールした。
_ 何が著作権侵害になり何がならないかの一般的な判断基準を作るのは難しい。とくに映像の場合は一瞬の画が全体を染め上げることがあるので長さは問題でない。結局最後は観客の印象で判断するしかないのではないか。
_ たとえば今回のマトリックスの最後のネオとスミスの豪雨の中の決闘は「七人の侍」の豪雨の中の野武士との合戦に似ている。でも、この程度なら観客はニヤリとするくらいだろう。次に、ネオとスミスの空中での格闘はドラゴンボールで何回も見た気がする(たとえば悟空とベジータ)。この場合も観客の反応は好意的だろう。でもナウシカの名場面が突然出てくると「エッ!ウッソー!」とかなり否定的になりうる。
_ ナウシカのあの場面は独創的で、感動的で、作品全体を象徴するものだ。つまりあの場面だけで「風の谷のナウシカ」を観たことのある人は一瞬の内に作品を貫く思想を感じあのテーマ曲が頭の中で奏でられるのだ。従って、私は「マトリックス レボリューションズ」は宮崎駿の著作権を侵害していると思う。