_ 濱口竜介監督作品。最後の20分を除けばそれなりに面白かった。
_ 芸能事務所が企画したグランピング場の建設をめぐる開発派と環境保護派の対立は陳腐ではあるが、セリフが生きているので緊張感がある。しかし、住民説明会で村の全員が反対派というのは不自然だ。当然土地を提供しようとする住民がいるだろうし、ほかにも開発から利益を受ける人もいるだろう。後半でそこらを描くのかと思ったら、とんでもない結末が待っていた。
_ ベルリン国際映画祭で銀獅子賞を取ったのだから、審査員はこの結末に何等かの意味を見出しているのだろう。それとも、なんだかわからないが、わからないというと、東洋の美を理解しない石頭の西洋人とみられるのを畏れたのだろうか。
_ 私はこの監督をあまり評価しないので、単に、結末がつけられなくなったので、ぶん投げたのだと思う。
_ 吉田恵輔監督作品。
_ 石原さとみが熱演。
_ 行方不明になった子供を探す両親の話。子供が見つかったという警察からの電話で警察に駆け付けたところ、いたずら電話だったことが判明したときの石原の表情がすごい。主演女優賞を取るだろう。
_ ところで、このいたずら電話の主はどんな罪に問われるのだろう。せいぜい、偽計業務妨害(警察の業務を妨害している)ぐらいだろう。起訴されることはなく、単に注意されるだけで終わるかもしれない。
_ 刑事上の責任とは別に、倫理的にはどうか。許せないという人が多いだろう。でも、SNSに書き込んだ場合には名誉棄損で起訴されることもあるが、それよりもひどい行為がとがめられない。
_ 刑事司法の目的は倫理とは違うようだ。
_ 「このミステリーがすごい!」大賞、文庫グランプリ受賞作。
_ 前半はすごくおもしろかった。地下アイドル三人組のセンターが事務所の社長を殺してしまう。ほかの二人は、その事実を打ち明けられ、協力して死体を埋めて社長が失踪したことにする。
_ はらはらしながら、隠ぺい工作が何とかうまくいったところで、三人は、突然地下アイドルのトップを獲ろうと決意する。そこらへんから、面白くなくなる。
_ 殺人をした者がそんなに楽観的になれるものか。あまりリアリティがない。
_ といいながら、最近の宝島夫妻殺人死体遺棄事件の20歳の実行犯二人は、犯行後大坂での遊興にほとんどの報酬金を使って、ピースのポーズの写真を残しているという。これが最近の普通の感覚なら。この小説もリアルな現在の世界を描いていることになる。
_ 翻って、現代の世界の紛争を見れば、殺人など日常茶飯事であるかことがわかる。イスラエルの兵士は、あるパレスチナ人がハマスの戦闘員だから殺せと上官に命令されたら、迷うとなく実行するだろう。
_ 宝島夫妻の事件の犯人たちの関係を見ると、年齢の順で指示が下りていることがわかる。縦社会の人間関係だ。その階層の一番下の20歳の二人は、自分たちがいる社会の規範に従って仕事を引き受けただけなのだろう。日本の多くの企業犯罪において、下っ端社員が会社のためと思わされて犯罪を犯すと同じことだ。