_ 「このミステリーがすごい!」大賞、文庫グランプリ受賞作。
_ 前半はすごくおもしろかった。地下アイドル三人組のセンターが事務所の社長を殺してしまう。ほかの二人は、その事実を打ち明けられ、協力して死体を埋めて社長が失踪したことにする。
_ はらはらしながら、隠ぺい工作が何とかうまくいったところで、三人は、突然地下アイドルのトップを獲ろうと決意する。そこらへんから、面白くなくなる。
_ 殺人をした者がそんなに楽観的になれるものか。あまりリアリティがない。
_ といいながら、最近の宝島夫妻殺人死体遺棄事件の20歳の実行犯二人は、犯行後大坂での遊興にほとんどの報酬金を使って、ピースのポーズの写真を残しているという。これが最近の普通の感覚なら。この小説もリアルな現在の世界を描いていることになる。
_ 翻って、現代の世界の紛争を見れば、殺人など日常茶飯事であるかことがわかる。イスラエルの兵士は、あるパレスチナ人がハマスの戦闘員だから殺せと上官に命令されたら、迷うとなく実行するだろう。
_ 宝島夫妻の事件の犯人たちの関係を見ると、年齢の順で指示が下りていることがわかる。縦社会の人間関係だ。その階層の一番下の20歳の二人は、自分たちがいる社会の規範に従って仕事を引き受けただけなのだろう。日本の多くの企業犯罪において、下っ端社員が会社のためと思わされて犯罪を犯すと同じことだ。