_ いくつか書き落としたことがあるので。元の会見記はエッセイの中にあります。
_ 三島のアタッシュケースの中に薬があったと書いたが、ビタミン剤などのビンがごろごろ入っていた。三島は、外人の友達がこれを見て、It's killing you と言っていたと笑った。
_ 途中で電話がかかってきたが、三島は家の外で電話を取った。軒下に電話が置いてあったようだ。その電話は三島が酷評した作家からのもののようで、三島は、「そういう意味ではなくて・・・」と盛んに言い訳をしていた。
_ 会見は終わり方が唐突だった。三島は突然立ち上がり、家の方へ足早に歩いていった。私と町永はビックリして御礼を言おうと立ち上がったが、三島はほとんどそれを聞かずに立ち去った。なにか失礼なことをしたのか、と悩んだが、しばらくして同じような光景をテレビで見た。それは三島がある著名な指揮者と一緒にオーケストラを指揮するという番組だった。指揮を終えた三島が戻ってきてそれを指揮者が拍手で迎えた。しかし、立ち上がって握手をしようとする指揮者を無視して三島は椅子に腰掛けた。指揮者は当惑していた。その指揮者は大柄で少なくとも私くらいの身長ー175cm-はあったろう。三島がそこで立って握手したら160cm弱の三島との身長の差は歴然であった。石原慎太郎と自宅のバルコニーで撮った写真なども、身長を隠すために白いスーツを汚してまで手すりにもたれてポーズをとったとどこかに書いてあった。あの時もそういうことだったのだなと今では思う。