_ JR東日本によると駅や車内における暴力の主役は50代だとのこと。また殺人比率も50代は20代を上回っているという統計がある。
_ 名古屋ビル爆破事件の犯人は52才だったそうである。彼はいわゆる全共闘世代に属している。全共闘の時代が正確にいつからいつまでを指すのかわからないが、1967年の第1次羽田事件から1972年のあさま山荘事件までと考えよう。その間、よど号ハイジャック事件、三億円事件、三島由起夫事件などなんども映画になった有名事件が起きた。騒乱と暴力の時代であった。彼は高校2年以降の青春時代をこの環境で過ごしたことになる。
_ この刺激的な時代は、全共闘世代にトラウマを残し、ベトナム帰還兵が一般社会に溶け込めないように、彼らを日本の社会からウイタ存在にしている。しかし、多くの全共闘世代はそれに気づいていない。彼らはむしろ自分たちの経験を誇りに思い、無神経に自慢する。機動隊に遠くから石を投げたことを勇気と勘違いし、時代の熱に浮かれていたことを思想を持っていたと誤解している。
_ 黒沢清監督の「アカルイミライ」にこのような全共闘世代が登場する。彼は小さなおしぼり工場の経営者で従業員と家族的な触れ合いを欲し、相手もそれを望んでいると思い込んでいる。二人の若いパートタイマーに娘の机を家まで運ばせ礼に夕食を供する。後日、二人のアパートに鮨の折詰持参で訪れた男は、70年代初頭の自分は「なかなかのものだった」といい、あの頃はみんなはっきりと目標が見えていたという。それに対する若者の返答は男と妻の惨殺だった。理由なき犯罪と思う人もいるだろうが、私は良くわかった。全共闘世代は嫌われているのだ。
_ 今日全共闘世代はリストラの対象となり、本来の年功序列のシステムからするとトップになれた人物も実力主義の台頭で疎外され若手にとって代わられる。この世代の憂鬱はこれから益々深まるだろう。
_ 映画を2回観て、漫画を4巻まで読んだ。
_ 想像以上に漫画に忠実な映画で、いいと思ったセリフや言葉は皆漫画の中にあった。
_ 大崎ナナの中島美嘉ははまり役で、他をもって替え難い。小松奈々(ハチ)の宮崎あおいは、ミスキャストという人もいるが、私は良いと思った。むしろ、宮崎の演技力があったから、あれだけ原作に近い人物像が描けたのではないか。宮崎もプロモーションDVDの中で言っていたが、ハチのような普通の女の子は演じにくいのかもしれない。ナナの視点が動かないのに対してハチの視点は揺れ動く。ささいなことで気分は天国と地獄の間を行ったり来たりし、自分が何を求めているのかも定かでない。そんな普通の女の子を宮崎あおいは等身大で演じている。ハチの普通さがあるから、ナナの個性が引き立つのだ。
_ この作品は、パンクロックや様々な都会的風景を映しているが、その本質は演歌的だ。男を追って、北国の女が東京に出ていく。女を動かす情念は意地と未練。徹底した個人主義者桃子、を描いた(こんな人物は日本映画にこれまでなかった)「下妻物語」とは180度違う映画なのかもしれない。
_ 介護をテーマにドラマを作ろうとすると、老人や障害者が団結して権力や大組織と戦い、それを支援する善意の人々がいる、というような話になりがちだ。この手の物語のネックは偽善だ。それを克服しないと感動する作品にならない。
_ 「任侠ヘルパー」の脚本家が試みたのは弱者に絡むのが「悪」という構図であまり例がない。翼彦一は、老人などから金を巻き上げる振り込め詐欺を生業としているヤクザの組長で、介護施設にいる老人の敵だ。
_ 昔のヤクザ映画でも、ヤクザが弱者を助けるという話は普通にあって、公害企業と対決するというのまであった。しかし、それらのヤクザは映画の中では侠客と呼ばれていて、博打以外の悪事は働かない。だからやはり偽善臭が漂う。
_ 翼彦一は、侠客ではなく、善人であると思われることを極端に嫌う。偽善者の反対の偽善者として描かれていて、いい人だと思われることに気恥ずかしさを覚える。
_ そのような彦一が、止むに止まれず正義を行ってしまうところに、いわゆるヒーローとは違った感動がある。もともと任侠道を実践するという意識はなく、仕方なく入った介護施設で働くうちに介護の問題に直面する。それは自分自身の生き方の問題でもある。
_ 最終回も解決策を示すことはなく、彦一は組を捨て、一人になる。ヘルパー研修で学んだのは本当の任侠道なのか。それはまだ分からない。続編が示唆される終わり方だった。いずれにしても、道を見つけるのは難しい。誰にとっても。
_ 評判がいいので観たががっかりした。
_ 映像はきれいだったが、ストーリーに無理があり乗れなかった。
_ 映像にしても、写真のような精緻な描写が評価されているが、それだけで感動するわけではない。「千と千尋の神隠し」の絵には情緒があった。
_ 「千と千尋」は先日英国のBBCが「21世紀の偉大な映画ベスト100」の4位にしていた。ただしほかに日本映画はリストされていない。年間50本ぐらい映画館で映画鑑賞してるが、日本映画(特に大作といわれるもの)に碌な映画がないのは確かだ。テレビ局が主体で製作している映画はほとんど駄作だ。