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2003-09-19 名古屋ビル爆破犯の憂鬱

_ JR東日本によると駅や車内における暴力の主役は50代だとのこと。また殺人比率も50代は20代を上回っているという統計がある。

_ 名古屋ビル爆破事件の犯人は52才だったそうである。彼はいわゆる全共闘世代に属している。全共闘の時代が正確にいつからいつまでを指すのかわからないが、1967年の第1次羽田事件から1972年のあさま山荘事件までと考えよう。その間、よど号ハイジャック事件、三億円事件、三島由起夫事件などなんども映画になった有名事件が起きた。騒乱と暴力の時代であった。彼は高校2年以降の青春時代をこの環境で過ごしたことになる。

_ この刺激的な時代は、全共闘世代にトラウマを残し、ベトナム帰還兵が一般社会に溶け込めないように、彼らを日本の社会からウイタ存在にしている。しかし、多くの全共闘世代はそれに気づいていない。彼らはむしろ自分たちの経験を誇りに思い、無神経に自慢する。機動隊に遠くから石を投げたことを勇気と勘違いし、時代の熱に浮かれていたことを思想を持っていたと誤解している。

_ 黒沢清監督の「アカルイミライ」にこのような全共闘世代が登場する。彼は小さなおしぼり工場の経営者で従業員と家族的な触れ合いを欲し、相手もそれを望んでいると思い込んでいる。二人の若いパートタイマーに娘の机を家まで運ばせ礼に夕食を供する。後日、二人のアパートに鮨の折詰持参で訪れた男は、70年代初頭の自分は「なかなかのものだった」といい、あの頃はみんなはっきりと目標が見えていたという。それに対する若者の返答は男と妻の惨殺だった。理由なき犯罪と思う人もいるだろうが、私は良くわかった。全共闘世代は嫌われているのだ。

_ 今日全共闘世代はリストラの対象となり、本来の年功序列のシステムからするとトップになれた人物も実力主義の台頭で疎外され若手にとって代わられる。この世代の憂鬱はこれから益々深まるだろう。


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