_ 4月29日京王プラザホテルで中学卒業44年目の同窓会があった。
_ 「あの頃ジュンと私は付き合っていたんだよね」とチャコ。
_ 1962年中学2年14歳のチャコと私は(今時のイミではないが)付き合っていた。周囲からはカップル(という言葉は当時はなかった)と認められ、彼女は「奥さん」と呼ばれて喜んでいた。でも、誰かが校舎の壁に大きく二人のイニシャルを入れた相合傘を描き、それが朝礼で取り上げられ、しばらくして二人は別れた。
_ 14歳という年齢は、純粋な恋愛が可能な最後(で最高)の年ではないかと思う。恋に関する感受性は大人のレベルに達し(それ以降はむしろ鈍磨するような気がする)、世間やしがらみから自由で、責任がない。「好きだ」という感情だけで生きて行ける稀有な時期なのだ。
_ 私の場合は、チャコを失った後で「好きだ」という感情がより純化され、苦しみの中に恍惚を感じるようなマゾヒスティックなものになっていった。忍ぶ恋が至極であると同じ理由で、失われた恋は記憶の中で無限に美しくなる。
_ チャコは、自分が冷たい態度を取ったのは、こわくなったからだと言った。大学に入ってからも、共通に使っている駅で、電車を降りて前を歩いている私を認め、何回も謝りたい、声をかけたいと思ったが、出来なかった。
_ そう言うチャコの横顔を見ていると、44年という歳月が霧が晴れるように消え去り、2Cのクラスの教室で話しているような気がする。
_ 「でも、いい夢だったね」「本当にそう」
_ 14歳。6ヶ月間の夢。
_ オバマ大統領は正義(justice)が達成されたと言っていた。果たしてそうであろうか。
_ Justice には正義のほかに裁判という意味もある。例えば、bring sb to justice は「裁判にかける」という意味になる。
_ ビンラディンは裁判にかけられることなく殺された。裁判で有罪が確定するまですべての人は無罪と推定される。従ってこれは無実の人の殺害ということになる。
_ 米国憲法第5修正は「何人も・・・due process of law によらずに、生命、自由または財産を奪われることはない」と定めている。この「法の適正手続」はアメリカが世界に誇る価値であったはずである。
_ テレビシリーズ「ザ・ホワイト・ハウス」では、ジェド・バートレット大統領が、テロ支援国の国防大臣を暗殺するエピソードがあったが、彼はその決断をするにつき大いに悩み、殺害後も落ち込んでいた。オバマ大統領は何の矛盾も感じないのか。
_ 米国はテロ国家に成り下がった。
_ 引退した有名作曲家・指揮者と最後の作品を撮ろうと思っている有名映画監督がスイスの高級リゾートで過ごす。二人は子供のころからの親友だった。
_ 音楽家(マイケル・ケイン)は映画監督(ハーヴェイ・カイテル)に尋ねる。彼女と寝たのか?彼女は二人が好きだった女。映画監督は答える。寝たかもしれないし寝なかったかもしれない。記憶がないのだ。音楽家は自分も過去の記憶があいまいになっていると言う。
_ 少年が展望台の望遠鏡をのぞいている。音楽家がどのように見えるかと聞く。少年はすぐ近くにあるように見えると答える。音楽家は望遠鏡を反対側からのぞくように言う。何が見えるか。少年は遠くに小さく見えると答える。音楽家は言う。若いころは未来は普通に望遠鏡で見るように近くにはっきりと見える。でも年をとると過去が望遠鏡を反対側からのぞいたように小さく遠くに見えるのだ。
_ 年寄りは昔のことはよく覚えていると人は言う。しかし私に限っては過去はあいまいで不鮮明な世界だ。小学校や中学の友達が昔の細かい出来事を話すが私の記憶には残っていないことが多い。
_ 今「戦場のメリークリスマス」の話を書いているが、10センチ以上の厚さのファイルの内容はほとんどが記憶から抜け落ちている。
_ 話は変わるが、記憶がそのようにあいまいなものなら、AIに十分に情報を与えれば本物に近いかまたは本物以上のコピー人格が出来るのではないか。
_ 三島由紀夫は「あなたの背中に三つのほくろがあればそれは文体に顕れる」と言った。肉体と文体の間にそのような相関関係があるのであれば、反対に文体から肉体を再構成することが出来るのではないか。
_ まず三島の全作品をAIにインプットする、さらに三島が読んだ作品もインプットする。さらには三島の作品に影響したと思われる社会事象に関する情報も加える。三島の作品が完成した料理だとするとこれらの情報が食材になる。そして食材を料理に変換するのが頭脳を含めた肉体になる。AIは食材と作品を分析することによって作品を生み出す肉体を再構築することが出来るはずだ。そのような肉体(AI)は新たな作品を作り出し、思想を生み出し、人類を支配することだって可能かもしれない。
_ このままいくとロシアは10年後には分裂し、30年後には、一部は中国になり、後は多数の小国になる。
_ それを予想したプーチンは核兵器による奇襲攻撃を計画する。世界中のターゲットを狙うが、インドネシアのバリ島で10月に行われるG20が主要目標。プーチンは出席を拒否されている。
_ プーチンとその側近は安全なシェルターで生き延びる。主要国の首脳は全滅し、世界の人口は10分の一になる。
_ しかし、100年後には、ロシアの支配する世界が残る。