_ ゴジラの第一作を子供のころにニューヨークのテレビで観たことは以前書いたが、そのぐらい古くて世界的な存在を知らない世界があるという前提が一種のパラレルワールドだ。
_ 最後のローリングタイトルに自衛隊が協力したことが記されるが、映画の中の自衛隊は米軍に従属する属国の軍隊のように描かれている。ゴジラが登場してすぐに在日米軍に依頼しようという案が出るが、まずは自分で防衛すべしとなって自衛隊が対応する。しかしヘリも戦闘機も役に立たずやはり米軍の援助を請う。そこで米軍の最新鋭戦略爆撃機B2数機がゴジラを爆撃する。そもそも日本は爆撃機を所有していない。
_ ゴジラは爆撃に怒り全身から熱光線を放射してB2を破壊する。そのとき属国日本の観客としては複雑な感情を抱く。日本を支配している米国を撃破するゴジラに親近感を抱くのだ。
_ この映画における日本の政治的状況の描写は正確で、それゆえに従来のゴジラ映画にある爽快感はない。ゴジラは我々が抱える多くの矛盾を暴き出しはしてもそれを解決してはくれない。
_ 映画は東京の真ん中で無力化されて立ち尽くす巨大なゴジラの姿を映して終わる。映画のタイトルの「シン」には神の意味もあるとのこと。