_ 久坂部 羊作(講談社現代新書)
_ 老後と死についての楽観論に対して過酷な現実を突きつける。
_ かんたんに言えば明るい老後なんてなく、死は苦しいものだということ。それは、古今東西当たり前のこととも言えるが、昭和以前と比べれば、老人が死ぬまでの時間が不当に引き延ばされているのが現在だ。
_ 昨日、小倉智昭が亡くなった。彼はフジテレビの「情報プレゼンター とくダネ!」で、黒澤プロがNHKを「武蔵 MUSASHI」が「七人の侍」を著作権法違反で訴えた訴訟について、私のインタビューを流してくれた。的確な解説をしてくれて、ありがたかった。残念ながら訴訟は負けたが。そんなこともあって、彼の病状については関心を持っていた。年齢も同じ。
_ 彼が膀胱がんを公表したのは2016年5月のことで、それから8年以上闘病していたことになる。それだけ、長く生きられたともいえるが、それが良かったとは言えない。現代の老人は、医学の進歩によってより苦しい終末期を強いられている。
_ この本の著者は医師で長年高齢者医療に携わってきたそうだが、その経験から患者を死なせないようにする悲惨な延命治療を批判している。昔の患者は、胃ろうやCVポートで無理やり栄養を取らされることはなく、食事ができなくなれば自然と弱って死んでいった。それがいいという医師は少ない。というか、本当はそう思っていても、責任を取らされることを畏れて、患者の苦痛を看過し、無駄な治療をする。
_ いずれ日本でも安楽死が認められると思うが、世界に比べて日本は非常に遅れている。