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2001-11-06 クローザー

_ 昨日ニューオータニのとんかつ屋でカウンターに腰かけて牡蠣フライ定食を食べながらワールドシリーズ第7戦を見ていた。9回裏クローザーのリベラがマウンドに上がった。

_ 定食を食べ終わった頃、リベラは1点を取られ試合は2-2のタイになっていた。リベラは死球を与え、一死満塁になった。その時リベラの顔には何とも言えない表情が浮かんだ。

_ 恐れ、苦悩、諦め・・・何れでもない。重く強い潮流に捕らえられ、意図する方向に身体が動かない。そして、流れが向かう先に死を認めた時人は何を思うか。静かな悲しみ・・・

_ 敵地での9回裏のクローザーには、悲劇の条件が揃っている。点を取られたらゲームオーバー、負けだ。先発投手だったら、次の回に味方が点を取ってくれるかもしれない。9回裏のクローザーは違う。味方にどんな強打者がいようとも、点を取られればその出番はない。リベラは孤独なボクサーだった。そして敵は塁を埋め、更に続々と登場する。

_ テレビの音は店の雑音で掻き消され、無声映画を見るようだった。小さなテレビの画面は、大観衆が立ち上がり、叫び、拍手をし、津波のようにリベラに襲い掛かる様子を捉えていた。リベラは、抗し難い流れの先に何があるかを確かに見たのだろう。

_ 終止符は、劇的なホームランではなく、平凡なポテンヒットだった。それは悲劇の終幕というより、巷のありふれた死のアナロジーだった。リベラの姿はテレビの画面から消え歓喜の祭りだけが延々と続いていた。


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