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2002-04-23 ブラックホーク・ダウン

_ 近代戦ともゲリラ戦とも違う。道一杯に広がってソマリアの民兵(市民や野次馬もいただろう)が銃撃を恐れる風もなく押し寄せてくる。「エイリアン2」でリプリーら精鋭部隊が立てこもる基地に押し寄せるエイリアンの大群。「スターシップ・トルーパーズ」で雲霞のごとく視野を埋め尽くす巨大な昆虫兵士の群れ。「ブラックホーク・ダウン」の敵はこれらと同様に人間として描かれていない。

_ 立派な英語を話す将軍や兵器商と襲撃する民兵とはあたかも違う生物のようで、後者の思想は語られない。米兵はテレビゲームのように群集に銃弾を撃ち込み、また無数のスナイパーから狙撃される。

_ この映画には米軍側の視点しかないという評が多い。だが、戦争をリアルに描くのはこの方法しかないのではないか。敵を人間だと思ったら殺される。相手側の理由を考えたら攻撃は出来ない。ひたすら多くの敵を殺し、味方の死に涙し、復讐を誓う。

_ 結論から言えば、私はこの映画が好きだ。素直で偽善がない(最後の自己弁護的な哲学は不要)。殺すことの快感が伝わってくる。

_ ここでカチンときた人に考えてほしい。戦争が「快」でなければなぜ人類は有史以来絶えることなく戦争を続けてきたのだろう。戦争の理由はいくらでもあった。富、領土にはじまって、民族、宗教、イデオロギーからテロ撲滅まで。ソマリアの米軍はジェノサイドを阻止するという名目で1000人のソマリア人を殺した。

_ この映画は図らずも戦争を正当化する大義名分の裏に「殺しの本能」があることを教えてくれる。人類は「戦争をする種」なのだ。


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