_ 昨日渋谷で観たが、すばらしい作品だった。観客は少なくもったいない。
_ 三島由起夫の「豊穣の海」と似ていると思った。「豊穣の海」は(すごーく簡単に言うと)純粋な情熱に突き動かされて20才に満たない人生を終え、そして転生する若者たちの80年に及ぶ物語だ。「千年女優」は70才になる往年の大女優、藤原千代子、のインタビューとして構成されている。しかし、映像は千代子の出演作に応じて王朝時代から未来までの1000年を映し出す。千代子が少女時代にめぐり会った革命家の青年との淡い初恋と別離は異なった時代を舞台に何回も再現される。それは、ひとつの純粋な情熱が転生により異なった個体で違う形で発現されるのに似ている。
_ 人生の経験をそれなりに重ねてきた者としては、千代子のさまざまな時代を背景にした恋が自らの過去の思い出とオーバーラップする。ノスタルジーとナルチシズムに酔っている私に千代子の最後のセリフが聞こえてくる。
_ 「でも、私はあの人を追いかける自分がすきなんだもん」
_ 監督!それを言っちゃお終いよ!