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2003-10-18 「28日後・・・」と「ドラゴンヘッド」 [長年日記]

_ 何れもカタストロフィを描いた作品だが印象は大いに違う。

_ 「28日後・・・」はダニー・ボイル監督のイギリス映画で、ウィルスによって人類(少なくとも英国)が絶滅に瀕する話だ。ウィルスは人格を破壊し、人間の攻撃性を極限にまで高め、血を介して伝染する。感染した人は10秒で発狂し攻撃してくるので、その前に殺さなければならない。

_ とにかく不快な映画で、良く出来ていたのでかえって観たあとの気分は最悪だった。楽観的と悲観的の二つのエンディングが上映されていたが、エンディングなどはどうでもいいから早く終わってくれと思った。

_ 生き延びるためには親友でも肉親でも殺すというのもいやだったが、ウィルスによって信頼していた人間が突然怪物になり攻撃してくるのは怖かった。子供の頃、仲良く遊んでいたはずのグループの中で気がつくと自分が一人攻撃の対象になっていることを発見したときの恐怖を思い出した。

_ ウィルスに感染した者を殺し、感染していない者同士殺し合い、最後に何人か生き残るが、残った連中が正義というわけではなく、カタルシスがない。

_ 「ドラゴンヘッド」は有名な漫画の映画化で、富士山の大噴火、大地震等で日本が形を変えてしまうほど破壊されてしまう。「28日後・・・」に匹敵する災害だが人々の反応は違っている。

_ 町ぐるみの集団自殺を企てる人々、恐怖を感じないように前頭葉を切除された子供、そして東京の地下の巨大な避難所には恐怖を感じなくする薬によって人格を失った多くの人々が無表情に何事もなかったかのように生活している。

_ 思うに、恐怖と攻撃は相互に原因となり結果となり、恐怖が攻撃という反応を引き出し、攻撃が恐怖をもたらす。それが無限に続いていく。「28日後・・・」の中に28日前に狂気が発生したのではなく、その28日前も、またその28日前も人間はずっと殺し合っていた、という趣旨のセリフがあったが、人間の本質を言い当てたものだろう。

_ 「ドラゴンヘッド」にも恐怖に攻撃で対抗しようとする人々は登場する。しかし、多くは恐怖を見ないようにする。「28日後・・・」と「ドラゴンヘッド」では災害の性格が違うから一概には言えないが、「ドラゴンヘッド」の描く日本人は世界の中では特異ではないか。日本人には自然災害に対するあきらめに似た畏敬の気持があるといわれるが、戦争のような人的な破壊に対しても同様な感情があるのではないか。たとえば、アメリカで一時大流行した核シェルターは日本では話題にもならなかった。

_ 「ドラゴンヘッド」は好きな作品だ。原作と比べて物足りないとする批評はあるが、よくあれだけの映像を作れたと思う。とにかく大災害の中でも人間のやさしさが残っているのがいい。日本的な甘さかもしれないが。


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