_ 退屈な映画だった。
_ 観客は母親に置き去りにされた4人の子供の話だと知って来るのだろうから、映画は観客が予想している以上の内容を提供しなければならない。けなげに、また無邪気に生きていく子供たちを描くだけで皆が感動するわけではない。子供たちはとても自然で良かったが、それは公園で遊ぶ子供を見ていることとあまり違いはなく、金を取って映画を見せる以上それでは足りない。とにかく2時間21分の上映時間は長すぎる。あの内容だったら1時間あれば十分でその方が充実したものになっていたろう。途中でいらいらしてきて、誰か早く子供たちを保護して映画を終わらせてくれという気持ちになった。一つ一つのシーンが長すぎる。長いシーンがあってもいいが、メリハリがないので眠くなる。
_ ストーリーもきれいごとで気に入らない。元の実話はもっと悲惨なものだったようだ。それをこの映画はメルヘンのように描いているが、それも成功していない。長男明(カンヌで主演男優賞を取った柳楽優弥)を助けようとするいじめられっ子の女子中学生が援助交際(それもカラオケに付き合うだけという欺瞞的なもの)で手に入れた金を明は拒否する。でも一番下の妹ゆきが死んだとき、明はゆきに飛行機を見せてあげたいのであの金を「貸してくれ」と言う。なにか中途半端。
_ 子供たちは電気、ガス、水道を止められても公園で水を調達し、トイレを借り、コンビニの店員から賞味期限切れの食料をもらう。大家はアパートを追い出そうとはしない。「シティ・オブ・ゴッド」(2002年ブラジル)ではスラムを舞台に小学生が銃を持ち殺し合いをしていた。これは極端だとしても、「誰も知らない」のような状況におかれた子供は日本以外の国だったら犯罪で生計を立てていくだろう。この映画は日本という不思議な富める国でしかありえない出来事を描いている。子供たちは最後まで善良でカワイソウな存在であり、善と悪との葛藤も経験せず、観客が感情移入しやすい、捨てられたペットのように扱われている。もっとも、実話はそんなきれいごとではなかった。やはり無理がある。