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2005-06-06 ミリオンダラー・ベイビー

_ ネタバレあり。

_ 「ロッキー」ばりのサクセスストーリーかと思って半分過ぎたところで、突然奈落の底に突き落とされる。マギー(ヒラリー・スワンク)は、世界タイトルに挑戦する試合でラウンドの終了後の反則攻撃で倒され、コーナーからフランキー(クリント・イーストウッド)が差し入れた椅子に頭を打って首の骨を折る。首から下が麻痺したマギーは、ハリウッド映画的な奇跡のカンバックはなく、人工呼吸器なしでは生きられなくなる。気丈なマギーも、壊死した左足を切断され、気落ちする。マギーは、事故の前にフランキーに話したことのある昔飼っていた犬の話をする。その犬は下半身不随だったが、前足だけで家の中を走り回っていた。マギーの父親は当時具合が悪く、先が長くないことを悟っていた。ある日、父親はスコップを持って犬を連れて車で森に向った。犬は久しぶりの外出を喜んでいた。父親は土に汚れたスコップを持って帰ってきたが、犬はいなかった。マギーは父親が、犬にしてくれたことを自分にもしてくれとフランキーに哀願するが、フランキーは拒否する。

_ マギーは舌を噛んで死のうとするが、失血死寸前で助けられる。しかし、また同じ事を繰り返し、鎮静剤を打たれる。マギーはフランキーに訴えていた。自分は貴方のおかげで世界タイトル戦まで経験した。何もなかった人生ならこれからの人生も耐えられるかもしれないが、自分にはあの興奮と自分の名前を呼ぶ観客の声が忘れられない。このままこのように生きていればあの感激が失われてしまう。

_ フランキーは毎週礼拝に通っていた神父に言う。マギーは挑戦したんだ(she gave it a shot)、だからもういいのではないか。自分の思うように生きたのだから。神父はこれまでフランキーがどのような罪を犯してきたかは知らないが、今度しようとしていることはそれと比較できないほど重大なものだと言う。

_ フランキーは夜、病院に忍び込み呼吸器をはずし、致死量のアドレナリンを注射し、行方不明になる。フランキーのカバンの中にはもう一本注射器が入っていた。

_ (上記会話は、一回しか見ていないので正確ではない。)

_ 最初は、尊厳死の話で、前半の華やかな物語は、後半との明暗を際立たせるためにあるのかと思った。しかし、しばらく考えて、she gave it a shotというフレーズが引っかかった。shotという言葉はその前にも何回か出てきた。フランキーの主義は、タイトルへのshot(挑戦)は未熟なうちには与えられない、というものだ。その機を待ちすぎたために他のマネージャーに取られてしまった有望なボクサーもいた。フランキーにとってshotとは人生で何度もあることではないのだ。

_ マギーは、ただの不幸な人としては描かれていない。マギーは栄光の座に手の届く所にいた。短かったが、皆がマギーに注目し賞賛し声援を送った日々があった。マギーは負け犬ではなく、選ばれた者だった。マギーは、自分の人生の輝かしい部分を汚すことなく消えていきたかったのだ。マギーを造り上げたフランキーは、神の教えに逆らって、マギーに死を与えた。これは一つの神話なのだ。


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