_ この年になると、何人かの親友が死んで、昨年は昔好きだった女性が死んだことを知った。
_ 当然、最後に会ったときのことを覚えているかというと、そうでもない。多分これが最後と思って別れるのではないから、日常的な多くの別れと一緒になってしまう。
_ 三島由紀夫が会話が途切れたときに、突然立ち上がって、じゃ、と言って去っていったのは昨日のことのように覚えている。
_ 町永と私は、何か失礼なことを言ったかと思って、狼狽して立ち上がってあいさつした。
_ そのようなことではなかったが、唐突に終了した会見は、まだ終わっていない残存感を50年以上たっても保持している。
_ 全てを見通していた天才にとっては、50年後の日本など視野の手前にあったのだろう。