_ 植木等さんが亡くなった。
_ 植木さんとは一度会ったことがある。「乱」の時で、それについては、映画「乱」製作秘話14章に書いた。たぶんバスの中で2,3時間は話したはずだが何を話したか覚えていない。映画やテレビで見るとおりの気さくな人だった。
_ 植木さん絡みではもうひとつ思い出がある。中学2年の終わりだったと思う。クラス単位で芝居をすることになった。なぜか私が、脚本・監督で、原水爆禁止の政治劇をやることになった。当時の国際政治を舞台に、実在の政治家を仮面で表現した。その仮面を描いてくれたのは、作家になった橋本治だ。ケネディとフルシチョフが会談をしているところに日本の池田勇人首相からの使者が来て核実験の中止を訴える。私は、役得でケネディをやった。さて、日本の首相からのまじめな訴えに対して両首脳はどう応えるか。突然当時流行っていたスーダラ節のレコードがかかる。そして舞台の上の全員が、植木等の振りで踊りだす。「わかっちゃいるけどやめらねぇ~」で幕が下りる。
_ 善福寺川の桜がほぼ満開だ。朝7時ころから川の下流に歩いて和田堀池を一周してまた戻る。約1時間のウォーキングだ。
_ もう二ヶ月近く日記を書いていなかった。私自身の人生は平穏なのだが、近くにいる人の人生が劇的な変化を遂げたので気を取られて書けなくなった。映画よりも奇想天外な人生というのもあるのだ。
_ 本人はそのつもりでなくても、平穏な人生に背を向けているような人はいる。劇的にしたくは無いのに、ジェットコースターに乗っているような生き方をしている人がいる。
_ 私はどうかというと、劇的な人生を夢見ながら巧妙にそうなるのを避けている。観客席から闘技場で闘っている戦士を見下ろしている。逃げたつもりではないのに結果的に安全地帯にいる自分にいらだっている。その時は来ないのだろうか。
_ アカデミー賞の脚本賞を受賞。
_ 北アイルランドベルファストでのカトリックとプロテスタントの紛争を背景にした監督の少年時代を描く。
_ 確かに脚本はよくできていてある時代を切り取ってきて知らない人にもわかるように映像化するとこうなるという見本。しかし、作品賞にはなにか足りないようだ。
_ 観終わって、しばらくすると感動が残らない。考えてみると、現実のほうがもっと過激で衝撃的だ。紛争は世界のいたるところで起きていて、その多くが、民族間、人種間、宗教間の争いで、このベルファストの件はその一例でしかない。
_ 我々は、このような紛争に慣れてしまって、感覚が鈍っている。映画にした場合、単に写実的なだけでは現実に負けてしまう。
_ ファイル共有ソフトWinnyの裁判についての映画。あまり面白くなっかった。
_ 題材は面白いのに、日本映画はまじめな題材を面白い映画にする能力がない。韓国映画にはその能力がある。
_ 東出昌大は名演技だった。主人公の金子勇に似せるため太ったようだが、イケメンではなく世間知らずの天才技術者をうまく演じていた。最後に本人の映像と音声が出てくるがよく似ていた。日本映画は本人に似せることはあまりやらない。アメリカ映画はびっくりするほど似せてくる。