_ 近代戦ともゲリラ戦とも違う。道一杯に広がってソマリアの民兵(市民や野次馬もいただろう)が銃撃を恐れる風もなく押し寄せてくる。「エイリアン2」でリプリーら精鋭部隊が立てこもる基地に押し寄せるエイリアンの大群。「スターシップ・トルーパーズ」で雲霞のごとく視野を埋め尽くす巨大な昆虫兵士の群れ。「ブラックホーク・ダウン」の敵はこれらと同様に人間として描かれていない。
_ 立派な英語を話す将軍や兵器商と襲撃する民兵とはあたかも違う生物のようで、後者の思想は語られない。米兵はテレビゲームのように群集に銃弾を撃ち込み、また無数のスナイパーから狙撃される。
_ この映画には米軍側の視点しかないという評が多い。だが、戦争をリアルに描くのはこの方法しかないのではないか。敵を人間だと思ったら殺される。相手側の理由を考えたら攻撃は出来ない。ひたすら多くの敵を殺し、味方の死に涙し、復讐を誓う。
_ 結論から言えば、私はこの映画が好きだ。素直で偽善がない(最後の自己弁護的な哲学は不要)。殺すことの快感が伝わってくる。
_ ここでカチンときた人に考えてほしい。戦争が「快」でなければなぜ人類は有史以来絶えることなく戦争を続けてきたのだろう。戦争の理由はいくらでもあった。富、領土にはじまって、民族、宗教、イデオロギーからテロ撲滅まで。ソマリアの米軍はジェノサイドを阻止するという名目で1000人のソマリア人を殺した。
_ この映画は図らずも戦争を正当化する大義名分の裏に「殺しの本能」があることを教えてくれる。人類は「戦争をする種」なのだ。
_ 話題の映画。面白かった。
_ 埼玉をディスる映画だが、同時に埼玉愛も描かれ埼玉と関係ない人も感動する。
_ 東京、埼玉、千葉、神奈川の微妙な関係と抗争が戦国時代のように展開する。考えてみれば、狭い日本の中の関東の一部でしかない地域でのいざこざだ。
_ 日本の他の地域を舞台にして同じような物語が作れるかと考えたが、簡単ではない。名誉棄損にならないようにまとめるのは難しいのではないか。
_ アメリカで考えたらどうか。南北、東西と対立はある。でも笑いでは終わらない気がする。人種、宗教や貧富の格差が絡んできて深刻なストーリーになりそうだ。
_ その意味で、日本の埼玉というのは貴重な場所かもしれない。