_ 前から見たかった作品でやっと見つけたので昨日見た。ローズマリーの赤ちゃんと似たストーリーの作品で十分楽しめた。これからネタばれなので注意。
_ いずれの作品も最後に赤ちゃんを母親が受け入れることになるが、この部分のインパクトはローズマリーの方が強い。ノイズでは母親が地球外生物にのっとられてしまうが、ローズマリーでは母親は子供が悪魔であることを承知の上で受け入れる。
_ 男としては、どこまで行ってもわかったと言いきれないテーマではある。母にとっては父親が誰であっても子供の遺伝子の半分は自分なのだ。それ以上に赤ちゃんが自分の一部になっているという感覚の方が大きいのかもしれない。
_ 白い戦闘服の3人の若者が渋谷の街を走り抜け、不良共を叩きのめす姿は爽快だ。映像もアーティスティックで日本の伝統的な様式美の中に渋谷と「ナショナリスト」たちを捉えている。
_ しかし、爽快感は最初だけで、3人は既成右翼の抗争にまき込まれていく。
_ 窪塚を追いかける女(ふけた女子高生)が登場する。彼女が、バスの中で赤ん坊を抱いた女性に席を譲ろうとしない男に対して、今の日本人は腐っていると憤慨する場面がある。彼女は「そのような」悪を正すことを窪塚に期待する。この作品の不毛はここに象徴されている。
_ 窪塚たちには倒すべき敵がいないのだ。だから彼らの暴力はそれ自体が目的になり、やがて自らを傷つけ破滅していく。なぜなら、バスの中で席を譲らない男は彼ら自身であり(勿論この行為はもろもろの小さな欺瞞、保身の象徴だ)、そのような悪を成敗するためには、先ず自らを切り裂くことが求められるからだ。
_ 面白かった。
_ アメリカに住む韓国の大富豪の跡継ぎが代々奇病にかかり、何かの祟りではないかと考える。そこで、富豪の当主は高額の報酬を提示し、集まった巫堂(ムーダン)、風水師、葬儀師が韓国にある先祖の墓を掘り起こし、お祓いと改葬をする話。
_ この手の話は、墓に悪霊、悪魔の類がいて暴れだすというのが定石だ。しかし、その墓に日潜んでいたのが、日本人の霊だったのが意外で衝撃的だった。
_ まず、掘り出された棺には日韓併合の時に暗躍した日本の軍人の霊がいた。さらにその棺の下に巨大な棺が縦に埋まっていてそこに葬られていたのは、関ヶ原の戦いで死んだ西軍の将軍と自称する霊だった。兜をかぶったその侍の霊は巨大で強力で、巫堂たちを追い詰める。
_ 朝鮮半島と日本との関係について考えさせる設定だ。日本は歴史的に見て三回朝鮮半島を侵略している。一番最近は1910年の日韓併合で、その前は、秀吉の朝鮮派兵。さらにその前には、倭寇による侵略があった。
_ この映画で描かれている将軍の霊(石田三成か)は、さらに北へ進軍しようとしている。戦いが終わったことは認めない。朝鮮にとって日本はどんな存在であったのか。繰り返される自然災害のようなものか、または何度も日本を襲うゴジラのようなものか。
_ 朝鮮半島を占領していたのは、我々の親や祖父の時代だ。そんな昔の話ではない。三度あることはまた起きると見るほうが安全だ。韓国や北朝鮮からすると日本は凶暴で残虐な民族なのだろう。
_ この映画を観たのは祝日の昼で、観客は多かった。中高生の女子が目についた。将軍の霊とムーダンが日本語で話すのを面白がっていた。平和な日本の休日だった。