_ 山口県光市で1999年4月、主婦と11ヶ月の長女が殺害された事件で広島高裁は一審の無期懲役の判決を支持し検察側控訴を棄却した。この判決の中で裁判所は「事前に周到に計画された殺害行為に比して、責任非難の程度はおのずから違う」と述べたそうである。これは従来から裁判所がとっている立場だが納得できない。
_ ちなみに無期懲役は一生刑務所に入っているわけではなく、10年(少年の場合は7年)で仮出獄が可能である。
_ 完全犯罪をねらって綿密な計画を立て2人を殺害した場合と衝動的に2人を殺害した場合とどちらが悪いか。何年か後に犯人が巷に戻ってきたとき社会にとってどちらが危険かといえば明らかに後者であろう。計画的な犯罪はそれに適した状況が必要だが、衝動的犯罪はどこでも起こる。たとえば保険金殺人は、それが可能な信頼関係を他人との間に築く必要があるが、強盗殺人は金を持っている人がいればどこでもいつでも出来る。
_ 矯正可能性にしても、計画的犯罪を犯す人間はそれなりの知性を有していて学習する能力もあるだろう。すでに犯罪が割に合わないことを学んでいるかもしれない。それに反し、衝動的犯罪者は学習能力が十分にあるか疑問だし、そもそもその衝動が遺伝子レベルの問題であれば矯正は不可能だろう。
_ 光市の事件の犯人の場合心配なのは、彼が何年か後に野に放たれたとき、自分を非難しつづけマスコミにも頻繁に登場した被害者の夫を狙うのではないかということだ。そのような事態が発生したとき裁判官はどうやって責任を取るのだろうか。
_ 取締役が経営判断を誤り会社をつぶした場合には法的、社会的に責任を取らされる。無期になった殺人者が出所し再び殺人を犯した場合、その結果につき裁判官は一切責任がないのか。法的な責任追及は難しいとしても、マスコミは無期の判断を下した裁判官の氏名を公表すべきではないか。