_ はっきり言って後味の悪い映画だった。
_ 失敗作という意味ではなく、むしろ傑作だと思った。しかし、見終わって映画というものは何のためにあるのだろうと考えてしまった。もっとも、こうやって書いていること自体この映画が私に何らかの影響を与えたことの証左なのだろう。
_ 以下、ネタバレあり。
_ ほとんど接点のない三つの人生の物語だ。必ずしも順番に描かれているわけではないが、一つ目はCMスターの話、二つ目は兄嫁に恋した弟の話、そして三つ目は殺し屋になった革命家の話。
_ 私にはCMスターの話が一番残酷に思えた。最初に彼女の栄光が描かれ、第2話の主人公(全く関係のない)の交通事故にまきこまれ重傷を負い、CMを下ろされ、やがて片足まで失い、自分の巨大なポスターが以前かかっていたビルの壁面が窓から見えるアパートに戻ってくる。でも、彼女にはボーイフレンドもいるし、愛犬もいるのだから他の二話の主人公に比べればまだ幸せかもしれない。決して全てを失ったわけではないのだから、彼女が生きる意欲を取り戻していくストーリーにだってできたはずだ。でもカメラは「広告を求める」という表示があるビルの壁面を無情に写し出す。
_ これが人生なんだろうと思った。誰が元気づけようが片足は戻ってこず、栄光は過去の夢だ。人生というのは大切なものを一つ一つ失っていく過程なのかもしれない。そんなことを考えた。