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2004-06-19 レクイエム 前編

_ 2004年6月1日 12:15

_ サヤはナオに目配せをして教室を抜け出した。向かうは学習ルーム。

_ 普段使われていない学習ルームには人影はなかったが、給食が終れば誰かが入ってこないとも限らない。

_ 「あと何分?」サヤが聞いた。

_ 「3分」

_ 「この機会を逃すと100年待つんだよね」

_ 「うん。本にはそう書いてあった」

_ 厚いカーテンを締めると学習ルームは真っ暗になった。細い隙間からもれる光が金色の帯になった。

_ 二人は手早く床にチョークで五ぼう星を描き、呪文を唱えた。現れた悪魔は毛の長い小型犬のようで尻尾の代わりに3匹の蛇がついていた。

_ 「えっ!これが悪魔?」

_ 「これよ!私夢で見て絵に描いたんだ」ナオが言った。

_ 「これとはなんだ!」悪魔が怒った。

_ 「ごめんなさい」ナオが謝った。「あなたを夢で見たわ。会えてうれしい」

_ 「わしは忙しいんだから、早く済ませるように」

_ 「願いをかなえてくれるんでしょう?」とサヤ

_ 「その代わりに魂をもらうからね」

_ 「えっ!そんなの知らない!」二人は叫んだ。

_ 「知らない?悪魔がただで願いをかなえるとでも思ったのか。どんな本にも書いてあろうが」

_ 二人は顔を見合わせた。

_ 「タイム。今日はやめよう。二人で考えるから、今度にしましょう。また呼ぶから」とサヤ

_ 悪魔は怒った。

_ 「そんな勝手が許されると思うのか!二人とも魂をもらうぞ」

_ ナオは茫然としていたが、サヤはしたたかだった。

_ 「わかった。わかった。じゃあこうしましょう。まだ私たち小学生だから、少しはサービスしてくれてもいいでしょう。二人の願いが両方ともかなったら、一人の魂をあげるわ。それでどう」

_ じれた悪魔は怒鳴った。「もう忙しいからそれでいい。早く願いを言え」

_ 「作戦タイム!」と言ってサヤはナオを部屋の隅に連れていった。

_ 「分かるでしょう」

_ 「何が?」

_ 「だから、実現しそうもないことを言うのよ」

_ 「私はピュリッツァー賞がほしいわ」とサヤ。サヤはピュリッツァー賞がアメリカ人にしか与えられないことを知っていた。

_ ナオは芥川賞と言おうとして考えた。「やっぱ、ノーベル文学賞!」

_ 悪魔は不快感をあらわにした。「いいだろう。そっちがそれならこっちも条件がある。両方の願いがかなったとき二人はまたこの部屋に戻ってくるのだ。そして一人がもう一人の首を斬ってわしに捧げるのだ」


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