_ サップの件はシアトルの弁護士から来た。その弁護士はサップとたまたま飛行機で隣の席になり依頼をうけたという。その弁護士の親友が以前、と言っても20年くらい前、に桝田江尻法律事務所でトレイニーをしていて私と仲が良かった。今ハワイ大学の準教授をしていると思うが何年も会っていない。とにかくその準教授が私を紹介したという。
_ サップは当時K-1に訴訟を起こされていて、その弁護を私に頼みたいとのことだった。事件の内容については守秘義務があるので書けないが、サップとは嫌になるぐらい電話で話した。今数えたら22回だった。
_ サップは夜型ーというか朝まで起きているようだーなので日本時間の午後にかかってくる。話好きで一時間ぐらい平気で話す。いわゆる黒人の英語で聞き取りにくい。さらにバックにラップがうるさく、半分も分からない。それを必死に理解しようとするとヘトヘトになる。
_ サップの話はよく飛ぶ。支離滅裂のようなときもある。でも頭は本質的によく、油断をしているとこちらの矛盾点を的確に突いてくる。これだけ話しても本人が何をしたいのか結局分からなかった。複雑な人間なのだろう。K-1の谷川さんにも分からないのではないか。
_ 理解できたのは、格闘技は大変な仕事だということだ。100キロ以上の人間が殴り合うのだから脳が損傷を受けても不思議ではない。サップはモハメッド・アリのようになりたくないと言っていた。ハングリーでなければ出来ない仕事だと思った。