_ ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演。
_ 退屈はしなかったが、傑作だとは思わない。
_ トイレ清掃員、平山、の日常を描く。掃除するトイレがみなきれいで不自然。渋谷のトイレ宣伝プロジェクトから発展してできたというが、普通の公共トイレは便がこびりつき、小便があふれ、時には嘔吐物がまき散らされている。それはないことにして、観光映画のようなきれいな渋谷のトイレと、スカイツリーを見上げる下町と、首都高速道路の景観を外国人向けに描いている。
_ 平山の周りの登場人物はおおむねいい人たちで、孤独な主人公を一人にしない。そして、完璧な日常は、痛みがないかのように続いていく。
_ このようなおとぎ話でなく、現実を描くとすれば、コミュ障の平山は、周囲から疎外され、仕事は過酷で、老いは逃れようがなく、金はなく、希望もない。最後の場面、清掃用の車を運転する平山の表情は、笑っているのか泣いているのか。ひょっとして、車両の荷台には、大量のガソリンを詰めたポリタンクが積まれているのではないか。