_ 原作(小説でも漫画でもいい)を映画化するには翻案権が必要だ。原作をそのままコピーするのが複製で、原作をもとに違った著作物を創作するのが翻案(adaptation)だ。
_ 翻案は原作に忠実である場合もあるが、原作に忠実である必要はない。
_ 拙著「黒澤明の弁護士」にも書いたが(104頁-105頁)、黒澤明の「天国と地獄」はエヴァン・ハンターの原作の翻案だった。つまり、黒澤はエヴァン・ハンターの小説「キングの身代金」をもとに脚本を書き、映画「天国と地獄」を作ったのだ。
_ しかし、「キングの身代金」と「天国と地獄」には、誘拐犯が社長ではなくその運転手の子供を誘拐するというところを除いてあまり共通点はない。黒澤はそのアイディアを借りたかっただけで、原作をそのまま映画化したかったわけではない。
_ 原作を翻案するのは、必ずしも原作にほれ込んでいるからとは言えない。原作のある一部だけに魅力を感じてそれを利用したいが、勝手に利用すれば著作権侵害になる。それを避けるためには翻案権の取得が必要になる。結果、原作を超えるような新たな作品ができることもあるのだ。