_ アメリカの入国審査の話。面白かった。
_ スペインからアメリカへ移民として入国しようとするカップル(事実婚)は別室で厳しい尋問を受ける。
_ 新聞などの映画評では、アメリカの入国審査が差別的で理不尽だということを訴える作品のように書いていたと理解したが、映画を観ていくと、むしろ、移民が狡猾で自分勝手に見える。
_ 移民側にも言い分があって、本件では、男がベネズエラ出身で、自国は、貧困と犯罪の巣窟で、未来はない。なりふり構わずアメリカで生活したいと考える。そのためには女を利用することもためらわない。
_ 審査官の尋問は執拗で、移民の本音を暴き出す。
_ 昔、司法研修所の検察修習で、検事の代わりに取り調べをしたことがあった。シャッターの閉まった倉庫で二人の男が殴り合い、双方がけがをしたという事案だった。二人とも相手が最初に攻撃してきて、自分は身を守っただけだという。
_ 検察修習では、班ごとに、裁判所、検察庁、弁護士会とまわって研修する。その時は、班の六人の修習生が、それぞれ取り調べをして調書を作った。指導検事が、提出された調書を見て、「殺人事件なみの調書があるね。10頁もある」と言った。私の調書だった。
_ 私は、尋問によって、二人のうちの一人が嘘をついていると確信した。そして、嘘をついているほうが傷害罪、もう一人が正当防衛で無罪という結論に至った。それを示すために長い調書を作ることになった。
_ 指導検事は、「こんなのは喧嘩両成敗。二人とも罰金刑だ」と言った。実務はそういうものだと理解した。
_ 検察官には魅力は感じなかったが、取り調べは面白かった。この映画の尋問もリアルで、よく考えられている。どうやったら、嘘をついている相手の矛盾する陳述を指摘し、真実を喋らすか。それを、権力がある側がやる場合は、サディスティックな快感がある。