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2005-04-22 三島由紀夫会見記補遺その2

_ なぜか「三島由紀夫会見記」に書かなかった面白い話がある。30年以上前のことなのであまり正確ではないかもしれないが。

_ 一つは、何からそういう話になったのか覚えていないが、創価学会の話になり、三島は「これからはミスティックなものが関心を集める時代になる」と言った。「ミスティック」という言葉が耳に残っている。創価学会の将来についての三島の予言が当たったかどうか分からないが、オウム真理教事件は三島の勘が鋭かったことを証明している。

_ もう一つは、多分SFの話をしていたときだったと思うが、私が「永遠と絶対を対象に出来るのはSFだけではないか」と言い、勉強している法律について、法律は永遠とも絶対とも関係がないからつまらない、という趣旨のことを言った。三島は一瞬考えて、「法律は相対的な絶対ではある」と言った。不変ではないが、その時代においては絶対的な力を持っているということだと思った。三島としては、法学部の学生の勉強意欲を削ぐようなことを言わないほうがいいと思ったのだろう。三島のコメントはそれほど意味があるものではないが、私の記憶に残っているのは、この発言の前に一瞬、多分10分の1秒ほど、の間があったことだ。三島の話にはいささかの淀みもなく、まるで決められたセリフのように言葉が出てくる。どんな頭にいい人間でも、考えるというプロセスがあってそれが相手にも分かるものだが、三島の場合は人間には感知できない速度の思考が行われているようだった。だから、一瞬の間が、三島が人間であることを感じさせてくれたという意味でとても印象に残っている。

_ 「私の履歴書」に書いた三島夫人、瑶子さんの仕事をしていたとき、プロデューサーの藤井浩明さんが瑶子さんに「三島さんにあるとき映画の批評をお願いしたんですよ。原稿用紙4枚ということで。三島さんはすぐペンをとって原稿用紙にさらさらと書き始めた。一気に書き上げて丸を打ったらそれが4枚目の原稿用紙の最後のマスだったんですよ。それも完璧な出来で」と話した。瑶子さんは「プロなんだからそのぐらい当たり前でしょう」と言っていたが、そうでもないだろう。いろんな人に会ったが、あんな人間は見たことがない。いや、本当に人間だったのか。


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