_ 日本政府は米英との開戦が迫る昭和16年に総力戦研究所という組織を立ち上げた。そこには、官民を問わず選別されたトップの頭脳が集められた。彼らは、日本が米国等と戦った場合の結果を予測することになった。
_ シミュレーションにより日本は3年余で敗北することが判明した。しかし、この研究は日本の政策には影響を与えなかった。
_ この中で、東条英機が言っていたのは、和平を選択した場合、日本は中国大陸から撤退することになり、それまでの戦争で犠牲になった10万以上の兵士の死は無駄になり、以後米国は日本を従属国として扱うことになり、日本精神は失われる。そのような未来を天皇は望まないだろう。
_ この選択肢のシミュレーションを作ってみたら面白いと思った。その当時、日米戦わばというたぐいの書物が何百冊も出版されていたという。国民は、総力戦研究所のような情報も分析力も有していなかったので、当然戦争には日本が勝つという未来を信じていた。
_ 仮に、内乱のような事態にならずに和平が成立したとして、日本人は満足しただろうか。大日本帝国は、大陸から手を引き、米国から輸入する石油に頼るしかなく、米国の言いなりになるしかない。
_ アジアに目を向けると、欧米に支配された国ばかりで、日本が手を引けば、欧米の植民地としての状態は継続しただろう。
_ 日本が喧伝していた、大東亜共栄圏は、日本を兄とし、他のアジア諸国を弟とする日本主導の考えだった。しかし、欧米からアジアを独立させるという目的は存在したのだろう。結果からみると、太平洋戦争は欧米による植民地支配を終了させた。
_ 東条は必ずしも間違っていなかった。