_ 刑事訴訟はやったことがないが、30年前の知識で言うと、このようなテープが証拠として提出されたら、まずその成立が争われるだろう。つまり本当にオサマの一派が作ったものか、誰がどこで手に入れたものであるか、など。
_ 次にその内容が問題になる。テープに加工がなされていないか。テープに手が加えられていないとしても、音声がかえられていないか。あのボケた映像だと唇が読めないので、適当にアフレコができる。
_ 上記がクリアーされた場合でも、録音テープは伝聞証拠になるのでオサマに反対尋問の機会が与えられなければならない。それがないと証拠能力は否定される。
_ 最後にその証明力が問題となる。アメリカはこれでオサマがあの事件の首謀者であることが証明される思っているらしいが、そう簡単ではない。これは事件の後で撮影されたもので、誰でもあんなことは言える。内容に犯人しか知れない秘密の暴露はなく、あのような話は誰でも考えつく。オサマが本当にあのような会話をしたとしても、彼が法廷であれは冗談だったといったらそれまでだ。実際自分をビッグに見せるためにあの手の自慢話をすることは考えられる。ありうる話としては、テロはアルカイダ傘下の団体がやったが、オサマはそれを知らされていなかった。オサマはカッコウがつかないので、自分が全てコントロールしていたことを示すためにビデオを作り、自らの威信を保つために傘下の各組織にコピーを配った。そうでもなければ、わざわざビデオを作る理由がわからない。このような可能性がある限りオサマを有罪にはできない。アメリカが誇る推定無罪の法理だ。しかし、このテープが決定的な証拠だというのなら、戦争をはじめる前にアメリカが持っていたと称する「確実な証拠」とは何だったのか?
_ 「カプリコン1」という映画がある。ピーター・ハイマムズ監督・脚本、1978年の作品。NASAの人類初の有人火星着陸プログラムは実は芝居だった。アリゾナの砂漠にセットを組み、宇宙飛行士が演技しそれをテレビで全世界に中継した。それがばれそうになったとき証拠隠滅が図られ宇宙飛行士も消されそうになる、という話だったと思う。大昔見たので違っているかもしれないが。いずれにして今回のテープなど偽造するのは造作もないだろう。全部CGで作れるかもしれない。映像にだまされる人は多いので注意。